近代化を頑強に否定していた第254代ローマ教皇グレゴリウス16世亡き後、その後を継いだクレメンス15世(ルイージ・ランブルスキーニ)は勃興する資本家たちを支持基盤とするギターノ・インブリアーニ枢機卿とタッグを組み、国内を改革。
その性急な改革に教皇庁内の保守派たちが反乱を起こし内戦が勃発するも、わずか半年でこれを鎮圧した教皇はさらなる改革を進め、直後に発生した欧州全土を巻き込む普墺戦争では両陣営に武器を供与してさらなる利益を上げていった。
さらにこの戦争のさ中、教皇庁は南イタリアの雄・両シチリア王国を関税同盟に組み入れることに成功。
1851年に逝去したクレメンス15世の後を継いで新たな教皇となったインブリアーニ(アレクサンデル9世)は、自身の支持基盤である資本家たちの力を借りながら、さらなる「金の国」に向けての体制構築を目指していくこととなる。
果たして、ローマ教皇領は無事、独立を維持できるのか。
そしてその先に、国民の幸福はあるのか。
~ゲームルール~
Ver.1.1.1(Earl Grey)
使用MOD
- Universal Names
- Historical Figures
- Dense Trade Routes Tab
- Umemployment and Peasant Data
- Improved Building Grid
- Visual Methods
- Romantic Music
- Visual Leaders
- Bug Fix 1.1
- ECCHI
目次
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今後の戦略確認
さて、ゲーム開始から20年が経ち、ようやく貿易を中心とした「金の国」の基盤が整いつつある。
一旦、現状を確認していこうと思う。
まずは、1856年時点での教皇市場における貿易状況を確認していく。
関税収入(商品の生産割合により全てではなく一部は関税同盟メンバーに流れている)と貿易収入の和から交易管理のための官僚制(行政力)代*1および護衛(輸送船団)代*2を引いた「最終利益」順に並べてある。
産業を推し進める上で必要不可欠な鉛と石炭に赤字が出てしまっているのは致し方ない。ここは一刻も早く自給できるように方策を練っていく必要がある。
一方で(所有者が教皇庁でないものはただ関税収入が得られるだけなので無視するとして)高級家具・小火器におけるフランスとの交易が、取扱量も少ない割に官僚制代・輸送船団代が嵩んでしまっており、低利益となってしまっている。これは是正する必要がある。
逆に高利益率を出しているのが鉄・染料の輸入と硬材・美術品の輸出*3である。
特に鉄に関しては、教皇領内で取れる鉄が(両シチリア王国を関税同盟に取り込んだため多少改善されたとはいえ)ウンブリア州の鉄鉱山9個分計180ユニットしかないためオーストリアを中心に鉄を輸入しているのだが、その輸入量が逆に多すぎたため抑制の意味も兼ねて「輸入品関税+20%」を付けていたことも高利益率に繋がっている。
交易による利益産出形態も、かつての輸出中心から輸入中心へと変わってきている。
このあたりで、保護主義を取り続けていた交易政策も転換が迫られているのかもしれない。
これらの状況を踏まえて、以下の改革を行っていくこととする。
- 鉛、石炭の自給促進
- 高級家具の自給促進
- 小火器の輸出先変更
- 交易方針の切り替え
まずは1の達成のための一つの手として、鉛・砂糖といった、教皇庁では採れず不足気味の資源を余らせているチュニジア市場の取り込みを狙っていく。
現在、温和・友好状態のチュニスは、義務(恩義)さえあれば関税同盟に加入してくれる状態。融資(1,440ポンド/週)を与えることで恩義獲得を狙おう。
さらに3の達成のために、普墺戦争も終わり小火器を市場内で余らせ始めたフランスへの輸出を止め、これが大量に不足しているというロシア市場へと輸出先を転換。このあたりは理想を言えば細かく変えるべきだが、なかなか難しい。
そして交易方針は保護主義から重商主義に変更。実業家集団も喜ぶ法律変更のため、問題ないだろう。
最近は知識人勢力の増長も気になっているところであり、重商主義により交易所の所有権を商人ギルドに強制変更することでその勢いを抑え込む意味もある。
2の高級家具自給についてはローマにある家具工場を高級家具中心に切り替えるだけで事足りる。不足する通常家具はウンブリアにそれ専用の工場を建てて賄おう。
そして1の石炭自給の問題を解決するのが、やはり植民地である。
植民地政策
それは、教皇クレメンス15世の頃から、当時まだ枢機卿であったギターノ・インブリアーニと共に進めていた政策であった。
1846年7月に植民地搾取の法律が制定されたのち、インブリアーニ枢機卿が先頭に立って南米の未開の地パタゴニアへの植民奨励キャンペーンが大々的に開始された。
インブリアーニを支持する実業家集団が狙っていたのはこの土地に眠る豊富な石炭資源。
産業化には欠かせない資源ながらどの国も採掘が進まず不足が続いているこの資源を、何とか自前で確保するためにはこの植民地の存在は必要不可欠であった。
そのために「神話の中で語り継がれる豊穣と幸福の理想郷」「約束の地」と大袈裟に喧伝しながら人を集めようとしたが、教皇領の元々の人口の少なさも相まってなかなか思うようには人が集まらない。
人が集まらなければ働く人もいないので、鉱山もなかなか機能してくれない状況が続く・・・。
そうこうしているうちにチリ、そしてアルゼンチンが原住民の反乱を制して領土を奪っていく。
このままでは植民政策が完全な失敗に終わってしまう・・・
そう考えたギターノ・インブリアーニ改め第256代教皇アレクサンデル9世は、極東の島国へと目を向ける。
石炭のみならず、鉛、鉄、木材と、教皇領が喉から手が出るほど欲しい資源が豊富にある黄金の国。かつてはスペインを差し向けながら失敗に終わったこの国の植民地化を、今度は教皇庁自らの手で進めていくことに。
1863年には教皇領ジャッポーネが完成。こちらが入植したと同時にロシアもようやくやってきて、千島列島と北見のあたりだけ取られてしまった。
なお、これらの政策のための関心を手に入れるべく、教皇庁では初の海軍を創設している。海軍10大隊ごとに1個の関心が得られるようになっているため、とりあえずは10個大隊を用意できれば問題ない。
なお、ちゃんと見ていなかったがアルゼンチンはどうやら原住民との反乱に勝てはしなかったようで、教皇領パタゴニアでは再び植民が始まっている。アルゼンチン、どうした・・・。
そして1869年には教皇領植民地もようやく先住民の反乱イベントを迎えることができ、これを制してついに教皇領南米植民地は成立した。
ただ、結果から言うとこの植民地政策はそこまでうまくはいかなかった。どの植民地も結局人口はほとんど増えず、貴重な資源も採掘できないまま放置されている状態。
そして懸案であった石炭・鉛については、ともにオーストリア帝国が大量に輸出してくれるようになった。
石炭に至っては1,720ユニットも売ってくれており、かなり助かっている。
鉛も含め、なぜ彼らがこれほどまでに豊富な資源を獲得できたかというと・・・
これである。
なんとオーストリア帝国が、オスマン帝国を関税同盟の中に入れることに成功。
結果、ビザンチウムからバグダッドまで、史実のドイツ帝国が夢見た3B政策を(ベルリン抜きで)実現してしまったというわけである。
そして上記画像でちらっと見せてしまっているが、実は両シチリア王国が関税同盟から抜けてしまっている。奪い取ったのはスペインである。
そしてチュニジアもオーストリアに結局奪われ、スペインはモロッコも関税同盟に繰り入れている。
サルデーニャ・ピエモンテ王国は随分前からフランス市場入りしており、その他のイタリアの小国はトスカーナ大公国以外はみなオーストリア帝国の保護国か関税同盟下に入り込んでいる。
もはやイタリア統一は幻に終わった。それは教皇庁にとっても狙い通りであったが、代わりに軍事的にではなく経済的に、イタリア、そして北アフリカが次々と分割されていく。
前回の普墺戦争のような大規模な激突もなく、この20年間は平穏に過ぎ去った。
しかしその背後では、列強同士とそこに食い込む教皇庁とによる、熾烈な世界経済大戦が繰り広げられていた。
世界経済大戦
この流れに、教皇アレクサンデル9世も乗り遅れるわけにはいかなかった。植民地政策が思いのほか結果を出せなかった以上、重要なのはとにもかくにも本土の人口。資源は輸入で賄うとして、とにかく産業を発展させるための人口が、イタリアの3州に存在しないといけない。
人口爆発のお供、多文化主義は今回は禁止している。国教も変えるつもりはないため、チュニジアの代わり、と思って関税同盟に組み込んだトリポリも、結局はムスリムの住民ばかりで市場内移民においても効果は全くなかった。そして資源もなく、無価値な土地となった。
カトリックで、資源もあって・・・と考えた結果、アレクサンデル9世は、教皇領植民地の存在する南米に目をつけた。
スペイン、ポルトガルの両国が植民地を築き、そこからの独立を果たした国家が連なるこの南米であれば、人々はみなカトリック教徒であり、ヨーロッパの遺産も持っている。
ローマへと人を集めるために・・・アレクサンデル9世は、早速南米諸国に対する「経済戦争」を仕掛けていく。
やり方は定番の、融資からの恩義獲得である。一通り関係改善したうえで「関税同盟に招待」にカーソルを合わせて受託スコアが-50以上あれば基本は融資でいける。態度:温和ならほぼ確実に行けるだろう。-30以上なら防衛協定で関係値を80まで持っていけば融資なしでもいける。
まずはアルゼンチン、続いてチリ・・・と南米諸国へ札束をばらまき、教皇領経済圏へと組み込んでいく。
しかし列強諸国もまた、ここに食いついてくる。地中海諸国でやったのと同じように、この南米でもまた、彼らは経済的帝国主義を発揮しようとしてくる。
南米は分割された・・・経済的に。もはや経済的に独立している国はほぼ、ない。
1876年時点でチリ、アルゼンチン、ウルグアイ、ニューグラナダ、ニカラグア、ホンジュラス、グアテマラ、コスタリカ、ミスティキア、トリポリの10か国を傘下に従えた教皇領市場は総額7,084万6,000ポンドへ。
列強諸国の経済圏に連なる大経済圏として台頭しつつある(上記のGDP値は何のデータか不明だが)。
そしてその最大の目的は市場内移住である。この拡大した統一市場の中で、貧しい南米のカトリック教徒たちを次々と招き入れる。
1860年代に入るといよいよ大規模移住イベントも発生。首都ローマのあるラツィオ州にはアイルランド系住民が大挙して押し寄せ、人口の1割がアイルランド人となった(1876年時点のラツィオ州の人口は413万人)。
また、第二の州ロマーニャにも、南ドイツと北ドイツからそれぞれ大規模移住のターゲットにされるイベントが発生。
182万人の人口のうち3割弱がドイツ人で占められることに。南ドイツ人はカトリックが多いが、北ドイツ人にはプロテスタントも多いため、こちらは宗教的に差別される人々も多少入り込んできている。
少しずつではあるが、本プレイ最大のボトルネックである人口問題も解決の糸口が見えつつある。
経済も順調に伸び、1876年時点でそのGDPは5,470万ポンドに。20年前の約6倍。
人口は大きく増えて720万人へ。20年前の2.4倍。そして小作農・未就業者が有業人口の4.5%しかいない・・・。
平均生活水準もようやく上がってきた。
ちなみにこれでも世界3位。
1位も20ポイントを超えておらず、やはり今バージョンから平均生活水準は上がりにくくなっているような気がする。
たとえばラツィオ州の家具工場を覗いてみると、こんな感じ。
トップの資本家の生活水準が55.2なのに対し、最下層の労働者の生活水準は17.0。決して低くはないが、格差は大きい。全体の平均生活水準は22.8である。
ちなみに前回のコンゴのときはこんな感じ。
トップの平均生活水準は変わらず55.9だが、以下の階層は全体的に全バージョンの方が生活水準が高い。実際、平均生活水準も28.4と、着実に上がっている。
着目したいのは資本家の給与。前バージョンのときはトップの資本家の年間平均給与は145ポンドと非常に高かった。
今回のバージョンのラツィオ州家具工場ではトップの資本家の給与が他の階層と同じく非常に下がっており、80.8ポンドしかない。しかし、他の階層と違い、生活水準が変わっていない。
前バージョンのときのデータを今から覗くことはできないので厳密な検証はできないが、参考になるかもしれないのが、このラツィオ家具工場の資本家の「週次POP収入」の内訳を確認したデータ。
収入の8割強が利益配当で賄われており、賃金が占める割合が非常に少ない。
もしかしたらこの部分が、新バージョンで大きく変化した部分なのかもしれない。
(違ったら教えてください)
つまり、施設の利益が給与という形で還元されることが少なくなり、その分を手元資金の拡充および利益配当という形でその施設の所有者のみに与えられる。労働者たちは皆、より少なくなったパイを取り合うことを強いられているという形だ。
富める者はより富み・・・19世紀の世界を再現する上ではより「らしい」形であり、金持ちを大事にして国家の利益に結びつけていく今回のプレイのコンセプト的には実にありがたいものである。労働者とかを不必要に強くしなくて済むしね。
逆に、この状況を是正するためには、たとえば法律「労働者の保護」などで最低賃金を上げることが必要になってくるのだろうか。これまでのバージョンでは割と影の薄かったこのあたりの社会保障系法律の重要性が上がるとしたらそれもまた実に魅力的だ。そのうちまたリベラル国家プレイをしてみたい。
さて、利益配当が大きくなると、それはすなわち投資プールをより大きくすることも意味する。
1876年時点で毎週10万7,000ポンドが投資プールに追加されており、その総額は現在1,080万ポンド。
建設で21万ポンドが毎週支払われているが、その全額をこの投資プールからの借り入れで賄っている形となる。
これこそが資本家を利用した経済!
1876年時点の収支状況はこんな感じである。
20年前と比べ、所得税は3.5倍、人頭税は2.2倍、消費税は1.5倍、そして関税は3.4倍である。収入の2割を関税が占めているのは気持ちいい。
関税の内訳は以下の通り。
オーストリア帝国から大量輸入している石炭が実に1万3,700ポンド/週もの関税収入をもたらしてくれている。
当然オーストリアからはひっきりなしに貿易同盟締結のお誘いが来るがすべて断っている。
ある意味でオーストリアにかなり依存した経済でもあり、内乱などで崩壊したときは恐ろしくもある・・・。
また、関心用に建造した海軍11隻以外は軍隊を一切持っていないことも大きな黒字の要因でもある。徴兵は132大隊分可能なのでこちらから攻めるつもりがなければこれで十分。海軍は少し補強してもいいかもしれないが・・・
威信には全く寄与しないため列強を目指すうえでは心もとないが、今回はそれを目指したプレイではないので問題ないだろう。
人口が多くないことによる、行政府の必要数の少なさ(現在はまだ9個)も支出削減に寄与している面がありそうだ。
そんなこんなで金保有高上限も限界突破し、浪費が発生しているほどの状況。前々回のアメリカプレイの比例課税制定後と同じような状況を、比例課税なしで実現しているのは大きい。
これこそ、「金の国」。
次回はこれをさらに推し進め、より世界を経済的に支配できるように成長していきたい。
もちろん、そう甘くはないのが、このゲームなのだが・・・。
第3回へ続く。
前回のシリーズはこちらから
*1:交易管理のために必要な官僚制15ポイントを産出するための行政府維持費を産出。紙の値段によって左右はされるが、1856年1月13日段階では合計455ポイントの官僚制を産出する7つの行政府の維持費は紙代・給与合計で13,790ポンド/週。ここから1ポイントあたり30ポンドと算出し、15ポイント分=450ポンドと計算した。
*2:合計1,600隻の輸送船団を生産する教皇領内の港計8つの快速帆船代・給与合計8,400ポンド/週から、1隻あたり5ポンドと算出した。なお、実際には関税同盟のメンバーからも輸送船団を供出させているため、厳密にはまた違った計算になるがそこは省略。あくまでも参考値。
*3:但し、染料の輸入と美術品の輸出は取扱量が少ないこともあり、国庫への直接収入となる関税収入については官僚制や輸送船団にかかる費用に対して赤字となってしまっている。あくまでもこの交易を取り扱う交易所の所有者たちだけが儲けている状況。