11世紀前半に後ウマイヤ朝が滅んだ後に生じた、タイファ時代と呼ばれるアル=アンダルスの戦国時代。これを勝ち抜き、新たにアル=アンダルスの支配者となったのが、「バダホスのアル=マンスール」より始まるアフタス朝バダホス王国である。
王国の大国化を成し遂げたのは、アル=マンスールの孫である3代目ウマル。「狼王(アルディブ・アルマリク)」と呼ばれた彼はアンダルス最強のタイファ・トゥレイトゥラのズンヌーン朝も打ち破り、アル=アンダルスを見事統一した。
さらにマグリブを支配するムラービト朝の内紛にも介入し、これを味方につけることにも成功。
あとは北のキリスト教勢力を駆逐するのみ、であったのだが・・・
1096年4月24日。
志半ばにして、狼王は急死。まだ51と、十分に生き抜けるだけの若さであった。
後を継いだのは嫡男のアル=ファドル。
武名に優れし者なれど、狼王の威厳と畏怖によって成り立っていたバダホス王国の行方は、決して順風満帆とはいかぬものであろうことは、誰もが予想していた。
果たして、アル=マンスールの一族は、このイベリアに栄光の帝国を打ち立てることはできるのか。
目次
Ver.1.12.3(Scythe)
使用DLC
- The Northern Lords
- The Royal Court
- The Fate of Iberia
- Firends and Foes
- Tours and Tournaments
- Wards and Wardens
- Legacy of Perisia
- Legends of the Dead
使用MOD
- Japanese Language Mod
- Historical Figure Japanese
- Nameplates
- Big Battle View
- Invisible Opinion(Japanese version)
- Personage
- Dynamic and Improved Title Name
- Dynamic and Improved Nickname
- Hard Difficulties
特殊ゲームルール
- 難易度:Very Hard
- ランダムな凶事の対象:プレイヤー含め誰でも
前回はこちらから
クルトゥバ会議
1096年5月15日。
戦争中であったカスティーリャ王国との講和をアラーッディンに任せ、アル=ファドルと側近のアフマドは急ぎ首都クルトゥバ(コルドバ)へと帰還した。
そこにはすでに、アル=ファドルの兄弟たちや重臣たちが集まっており、皆この王国の行く末について油断ならぬ視線を互いに交わしていた。
「遅かったな、兄上」
最初に声をかけてきたのは、長弟のバジャ公アル=アッバース。勤勉で優秀ではあるものの、独りよがりなところがあり、あまり評判の良い男ではない。
「兄上が来なければ、話し合いを始めることすらできぬのだぞ」
「まあまあ」
アル=ファドルに詰め寄るアル=アッバースを、体を割り入れて止めたのは次弟のサラクスタ(サラゴサ)公ムハンマド。
「ファドル兄さんは前線でかのカスティーリャ王国を相手取って指揮を執られていたのだ。そこを無責任に放棄するわけにもいかないだろう?」
そう言ってムハンマドは兄たちに優しく笑いかける。正義感が強く人付き合いも良い彼は、曲者が多い兄弟の中では最も愛され、そして有望視されていた男でもあった。
「フン・・・まあ、未だに来ていない奴よりは、マシかもしれんな」
アル=アッバースがそう告げたとき、部屋の入り口から群衆を掻き分け、騒々しく入ってくる者がいた。
「いや、すまんすまん。遅れてしまって」
言葉とは裏腹に全く悪びれた様子もなくゆっくりと近づいてくるのは、三弟のバダホス公アル=ムザッファル。女好きで気まぐれなところがあり、独善的なところはアル=アッバースと近いところのある男だ。
「最も首都に近い領地を持つ貴様が、なぜ遅れるのか」
アル=アッバースが怒気を放ちながら詰め寄り、アル=ムザッファルものらりくらりとかわす。さすがのムハンマドもこれを止める気はないようで、アル=ファドルに視線を戻して話しかけてくる。
「さて、兄さん。ようやく兄弟全員揃ったね。父亡き後の王国の行く末を決めるための、重要な会議だ」
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クルトゥバには上の四人兄弟の他に、領地は持っていない5人の弟アルヤマス(22歳)、ガーニム(21歳)、ベルカン(20歳)、イブラヒム(13歳)、フィルハン(7歳)が滞在していたが、彼らはこの会議には出席していない。
代わりに王国内の有力諸侯が顔を揃えており、アフタス家のみならず共にこの王国の行く末を話し合う権利を有していた。
まずはトゥレイトゥラ(トレド)のタイファ、ズンヌーン家のアル=カーディル。かつて父の友人でありライバルであったヤフヤーの孫である。
その「年下の叔父」ジグザも、父からバランシヤのタイファ領を継承。かつてアル=アンダルス最強と目されたヤフヤーの末裔は、従属してのちもまた、王国内で強い存在感を発揮していた。
次にガルナータ(グラナダ)のタイファ、ズィール家の「怠惰なる」タミム。戦乱の時代にあっても動かず、侵略することもなければ抵抗することもなく、いとも簡単に狼王の軍門に降ったが故にこう呼ばれているが、その実内政には長け、豊かな領土の形成している。現在は王国の徴税官も務め、密かに私服を肥やしているとも噂されている。
このタミムの叔父である同じくズィール家に属するマクサン・イブン・バディスもジャイヤーンの領域を保有し、タイファではないものの国内における影響力は強いものであった。
これらの有力諸侯たちも額を突き合わせ、バダホス王国の今後を決める会議が幕を開けた。
「まず、当主の座は後嫡男のアル=ファドル様ということで異論はないですな?」
会議を取り仕切る役目を与えられた王国家令のアブドゥル・ガフールの言葉に、一同は無言で頷く。
「それでは続いて、アルディブ・アルマリク様の直轄領の分配についてですが、首都クルトゥバとイシュビーヤ(セビリア)については当主アル=ファドル様に。エヴォラとアル=バシュはアル=アッバース様、メデリンはムハンマド様、そしてヒスン・カスラスはアル=ムザッファル様に継承が宜しいかと存じます。その訳は・・・」
地図と共に手際よく説明するガフール。算術に長け、地勢に詳しい官僚たちの計算のもとに算出されたその国分けの論理は、理解の可不可に関わらず、異論を差し挟めるような類のものではなかった。
そしてガフールは一門衆以外の諸侯らにも視線を送り、彼らが期待する言葉も用意する。
「さらにアル=カーディル様にはアル=ウルクブの地を、タミム様にはアル=カラスの地を分け与えまする。引き続き王国の秩序と安寧がため、ご協力を願いたく」
ガフールの言葉に、アル=カーディルは「うむ」と返答する。タミルも黙ったまま頷く。ジグザとマクサンは特に領地の分配はなかったが、それぞれの家の当主が認める以上、特に文句は言えず押し黙った。
「それでは、他に異論がなければこれで――」
「待たれい」
締めにかかったガフールの言葉を、アル=カーディルが止めに入る。
「まだ、王国の評議会の地位について、議論が行われておらぬ。家令の地位はガフール殿で問題なかろうが、例えば元帥の地位についてはどうか」
アル=カーディルの言葉に、ガフールが眉根を寄せる。
「評議会の選定は国王陛下の専権事項であると考えますが」
「先代のアルディブ・アルマリク様の頃ならばそうだろうが、今は新たな時代。先ほど、ガフール殿が仰られたように、我々はこの王国の秩序と安寧のために協力する意思がある。その具体的な形が、評議会だと我は考えるが?」
「確かに」と、アル=カーディルの言葉に、「怠惰なる」タミムも同意する。
「カーディル殿は少し回りくどい言い方をしているが、直截に言おう。土地のみならず、評議会の地位もまた、この王国で実力ある者に適切に配分されるべきだ」
二人の言葉には答えず、ガフールはちらりと「国王陛下」に視線を送る。
その視線を向けられたアル=ファドルは、少し狼狽えながらも口を開く。
「カーディル殿の言うことも理解できる。しかし現行の王国元帥たるシル・ベラス将軍もまだカスティーリャより戻ってきておらぬのだ。今暫く、その議論については留保すべきでは」
「否」とアル=カーディルは語気強く否定する。
「今この場におらぬからこそである。グレドスの奇跡などともてはやされているが、奴は所詮は異教徒であり、どちらかと言えばキリスト教徒共に近いような存在。そのような者が元帥に任じられていることこそが、おかしいことだったのだ。かの狼王様であれば制御能うところもあったであろうが、今この不安定な時期に、そのような人事を継続するべきだと本当に考えられるのか?」
「それで言えば、宰相のアベイ殿も同様だな」タミムが追撃で口を挟む。
「アベイ殿もやはり同様に異端の者。その知恵と外交術には敬服するも、カーディル殿の仰られるよう、王国の統一と秩序のためには、不安定要素はできるだけ取り除くことが肝要かと」
畳み掛けるような二人の言い分に、アル=ファドルも答えに窮する。二人以外にこの場に居並ぶ諸侯や弟たちも、口には出さねど概ね二人に同意する雰囲気を醸し出していた。
どうしたものか――迷い、冷や汗をかき始めたアル=ファドルを救うかの如く、会議室に許可を得た伝令が入り込んでくる。
「皆様方、重大なる会議中、誠に失礼致します。緊急の要件にて、ご容赦を。
南方カーディスの地に、西アフリカ沖のアチネクの海賊が来襲。略奪の限りを尽くしております」
「現地の兵により撃退を試みるも敵わず、壊滅。王国軍の救援を急ぎ求められております」
伝令の言葉を受け、場の一同の視線がアル=ファドルに向けられる。
アル=ファドルはむしろ救われた心地がして、堂々たる様子で宣言した。
「分かった。元帥不在ゆえ、我が自ら兵を率い、対処に当たる。一同、一旦この場は解散と致す。良いな?」
アル=カーディルは不服そうな様子を隠そうとしなかったが、渋々と頷き、それに合わせて他の面々もまた、同意を表明した。
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1096年7月。
会議の解散後ただちにアル=ファドルによって招集された王国軍は、アフマド・セビタ将軍の指揮の下、蛮族が略奪を働くカーディスの町に急行。近郊のへレスの平原でこれに襲い掛かり、一瞬のうちに撃退した。
「まったく――やはり俺は政治の場には向いていないよ。こうして戦場にいる方が何倍も気が楽だ」
戦後の処理をこなしながら、アル=ファドルは傍らのアフマド将軍に向けて愚痴を溢す。アフマドは顔を顰めつつ主君を諌める。
「そのようなこと申し上げるべきではございませぬ。アル=ファドル様は狼王様の紛れもなき御嫡男。御嫡男のアブー=バクル様の御為にも、責任を果たさねばなりませぬ」
「分かってる。分かってるよ、せ――アフマド」
アル=ファドルは苦笑する。
「ほんの冗談・・・でもないかも知れぬな。会議の後、弟のムハンマドに、気苦労多いならば当主・国王の座を引き受けても良いとまで言われ、心が動きかけたくらいだしな」
「――陛下・・・私は誰よりも古くから、そして長く陛下のお傍にお仕えしております。私から見て、陛下のそのバランス感覚、気配りは、この混乱の時代の王国をまとめ上げるのに相応しい気質と考えております。どうか、ご自信を」
アフマドは真っ直ぐにアル=ファドルを見据えて告げる。この男が冗談やおべっかの類を苦手としていることはアル=ファドルも分かっていたし、だからこそ彼はこの男を信頼し傍に置き続けていた。
「ありがとう、アフマド。もちろん俺は責任をもってこの役割を果たしきるよ。例え時間がかかっても、父に負けぬ王国を創ってみせる。それが何よりも、父に対する恩返しだと理解しているからな」
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バダホス王国北東部、キリスト教国アラゴンとの国境沿いに位置するサラクスタ。狼王アルディブ・アルマリクの三男、ムハンマド5世が治める王国の辺境領であった。
「遠方での会議参加、お疲れ様で御座います」
ムハンマドの宰相を務めるアブドゥル=ジャリールが、恭しく主君を出迎える。
「御兄弟の御様子は如何でしたかな」
「ふん・・・アッバース兄さんも相変わらず騒々しく、弟のムザッファルも信用ならぬ男であった。ファドル兄さんも人は良いのだが、君主としては頼りにならぬ。苦労してそうだったので役割を変わろうと提案してみたが、まあすぐには首を縦に振らなかったな」
「焦らずとも、そう遠くない未来に理解するでしょう。ムハンマド様こそが、狼王様の御子息の中で最も優れたる御仁であるということは」
アブドゥル=ジャリールはクックと笑いながら告げる。ムハンマドも微笑を浮かべながら応える。
「傲慢こそ、統治者の最大の敵だ。驕らず、焦らず、事を一つ一つ為していくだけだ。国境の様子は?」
「は。元帥のハリールに常に監視をさせておりますが、今のところアラゴン王国の動きはなさそうです」
「奴らも先の戦争で随分と痛い目に遭っているからな。そうすぐには動かぬだろう。今のうちに王国内で『混乱』が巻き起これば・・・」
「アル=ファドル様がその対処に苦慮している間に、ムハンマド様がこれを解決する、と言うわけですな」
「そう簡単にはいかぬだろうがな。ただこれだけは言える。貴殿ら優秀な官僚にも囲まれ、敵国に最も近く最も危険な位置を任されている我々こそが、この国で最も強い存在であることは。有事にて、王国は誰もがそれを理解することだろう」
そのとき、ムハンマドに一通の書簡が届けられる。
「差出人は・・・アル=ムウタミド殿ですな」
先に受け取ったアブドゥル=ジャリールは封されたその書簡の差出人を確認する。
「元イシュビーヤのタイファであったアッバード家の生き残りか。確か今はアル=マニヤのみを領していたか」
「お開けいたします」
そう言ってアブドゥル=ジャリールは封を開け、中の書簡を取り出す。中には2つの手紙が入っていた。
特に危険なところがないことを確認した彼は、その二通をムハンマドに手渡す。ムハンマドはその内容を確認し、わずかに眉を顰めた。
「ほう・・・なるほど?」
「どうされましたか?」
アブドゥル=ジャリールの言葉に応えず、ムハンマドは無言で一通を彼に手渡す。
中身に目を通し、彼は驚愕した。
「これは・・・ムハンマド様の奥方であられるタクリト様が、弟君のアルムザッファル様と不義の関係を結ばれていることの、密告ですと?」
「ああ。ご丁寧に、妻から弟に出した手紙までついてきている。確かに、妻の字だ」
そう言ってムハンマドはもう一通をアブドゥル=ジャリールに手渡し、彼もそれを見て眉間の皺を深くする。
「ううむ・・・確かに・・・正直なところ、紛れもないように思えます」
「うむ。そうだな。ムウタミドも良くぞこんなものを手に入れた。まああのムザッファルのことだ。宮廷内の防諜もさほど行っておらず、隙だらけなのだろうが」
「然して、これを事実として、如何様になされるおつもりで?」
アブドゥル=ジャリールが尋ねると、ムハンマドは暫し思案する様子を見せたのち――
「タクリトを捕え、軟禁せよ」
こともなげに言い放ったムハンマドに、アブドゥル=ジャリールは驚きを浮かべる。とはいえこの主君が、凡庸な嫉妬や怒りで行動を起こす類でないことは理解していた。
「しかしタクリト様はズンヌーン家の姫君。ともすれば当主のアル=カーディル様は黙っておられぬのでは」
「そうだな――そしてその方が都合が良いかもしれぬ。兄上には今暫く、困難に立ち向かってもらおうじゃないか」
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9月7日。
サラクスタのタイファ・ムハンマドが、妃のタクリト・ズンヌーンを不義の罪で投獄。そして弟のアル=ムザッファルを公的に非難する事態が発生。
当然、アフタス家の兄弟間におけるトラブルに自身の妹が巻き込まれ、さらには投獄されると言う事態にアル=カーディルは激怒。彼も半ば公然にアフタス家に対する批判的な論調を繰り返すようになり、バダホス王国内は混乱の極みに至りつつあった。
果たして、アル=ファドルはこの「波上の小舟」たる王国をいかにして安定せしめるのか。
物語はさらなる局面へと向かっていく。
第3次カスティーリャ戦争
「そちらは色々と大変だな」
1097年8月1日。
イベリア半島南端の街アルヘシラスで、アル=ファドル王の歓待を受けるムラービト朝の大アミール(アミール・アル=ムスリミーン)アブー=バクルは愉快気に笑う。
「まるで人ごとだな・・・」
「まあ、実際人ごとだからな」
アブー=バクルはアンダルシア名物のガスパチョに舌鼓を打ちつつ、投げやりに答える。アル=ファドルの妹バハックの夫でもある彼とアル=ファドルとは同年代であり、先達ての彼のクーデター戦争においても、アル=ファドルが前線に立って活躍し成功に繋がったことから、両者は親しい間柄となっていた。
「不安の種はサクッと排除すれば良いのだ。我がそうであるようにな」
「ああ・・・先達ての前代大アミール、イブラヒム殿の『不可解な死』はやはり・・・」
「ま、ご想像にお任せするよ」
「残念ながら急な政権移譲ということもあり、貴殿のように国内での絶対権力を獲得はできていないのだ。そう好き勝手はできんよ」
「フン・・・ならばあえて挑発し反乱を起こさせれば良い。その時には我も協力はする。いくら国内最有力諸侯とは言え、貴様と我とが手を組めば鎮圧も容易だろう」
「そうかもしれんが・・・」
実際、アル=カーディフを中心に反乱の兆しがある旨は情報を掴んでいる。いつ彼らが蜂起しても良いように密かに準備も進めている。だが、なかなか彼らも動かない。
「こちらの狙いも分かっていると言うわけか・・・ならば、誘いを出してみると言うのはどうだ?」
アブー=バクルはニヤリと笑い、提案する。
「誘い?」
「ああ。あえて、隙を見せるのさ。奴らが好んでいるような形の、な。
例えばそう、カスティーリャへの侵攻を、そろそろ行ってみるのはどうだ?」
「なるほど・・・」
アル=ファドルはその提案を吟味する。リスクは間違いなくある。しかし一方で、ここで行動することは国内における権威を高めることにも繋がる。その上でアル=カーディフらを誘き出せるなら、一石二鳥にも三鳥にもなるだろう。
「カスティーリャ攻めには我々は動かず、その後の『反逆者』への対応のために兵を待機させておこう。ジェリド族長にも声をかけておく。背は任せたまえ」
アブー=バクルの頼もしい言葉に、アル=ファドルは頷く。
そして、運命のときは訪れる。
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1100年2月17日。
前回の停戦から4年。3度目のバダホス-カスティーリャ戦争が開幕。今度はこれまでの2回と異なり、バダホス王国側からの宣戦布告であった。
代替わりが行われ、バダホス王国内は不安定な状況に陥っていると聞いていたカスティーリャ・アラゴン同盟側は十分な準備ができておらず、間もなくしてカスティーリャ王国王都ブルゴスが陥落。
女王はすでに退避していたものの、宝物である聖ゲオルギオスの腕が奪われるなど、王都は掠奪の限りを尽くされ、散々な状況となっていた。
一方、東方に逃れたカスティーリャ軍主力は、アラゴン王国軍主力と合流し、国境に位置するサラクスタ領へと侵攻。
しかしバダホス王弟ムハンマドの元帥ハリールが防衛するこのトゥデラ城は容易に落ちることなく、持ち堪えている間に西からはバダホス王国軍、そして東からはその同盟国たるジェリド大族長国軍が近づいてきており、決戦は間近となっていた。
第3次カスティーリャ戦争。それは、わずか半年で、バダホス王国側の圧倒的勝利という形で終結する、かのように思われていた。
が――。
「冷酷非道なる狼王の統治の下、辛酸を舐めた同胞たちよ! 今こそ我々の復讐の時だ! 我々の力を見せつけ、正当なる権利を手に入れようではないか! このアル=アンダルシアにおける、第2のウマイヤ朝、アフタス家による専横を許してはならぬのだ!!!」
1100年7月11日。
王国内最大の諸侯たるトゥレイトゥラ公アル=カーディフ及びこれに追従するバランシヤ公ジグザ、そしてアル=カラス伯アブド・アッ=ラフマーンらが一斉に蜂起。
総勢5,400超の軍勢を揃え、カスティーリャ・アラゴン連合との戦いに邁進中の国王アル=ファドルに対し反旗を翻した。
しかし、その次の瞬間――。
「アフタスとアル・ムラービトの間の同盟に基づき、兵を挙げる。アル=アンダルスとマグリブ、ジャバル・タリクの海峡を挟んだ二大国の永久の平和と安寧を揺がす者は、例えマグリブの外であろうと駆逐しよう!」
アフリカの最強国ムラービト朝が兵を挙げ、イベリアへと上陸する。
さらに――。
「トゥレイトゥラのタイファは、私怨に基づき我らがカリフへと牙を剥いた。さらにこの動きは北の異教国カスティーリャとの連携さえ疑われる。我々の正義に基づき、これを打倒するのだ!」
ムワッラド派のカリフでもあるアル=ファドルが密かに創設していた「ハディース戦士団」が総長マスガヴァの指揮の下で兵を集め、首都クルトゥバで挙兵。
東のキリスト帝国に由来する重装騎兵カタフラクトも含んだ精強なる部隊は、ムラービト朝の軍団と連合し、挙兵した反乱軍へと向かっていった。
「――なるほど、ファドル兄さん、中々やるな」
サラクスタ城で戦況報告を聞いていたムハンマドは、南方の状況を聞き、笑みを浮かべる。
「突如自らカスティーリャに宣戦布告した際は驚いたが、なるほどなるほど・・・自ら釣り出したというわけか。誰かの入れ知恵かもしれんが、頼りないという兄上への評価は撤回せねばならんかもしれんな」
「反乱軍鎮圧がため用意していた部隊はどう致しますか」
「暫く様子を見よう。まだ、動きがあるやも知れぬからな」
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「南部トゥレイトゥラでアル=カーディル挙兵との由。事前の計画通り、マグリブのアブー=バクル殿とハディース戦士団が参戦し、拮抗の構えを見せております」
「良し。約束は守られたわけだな。ありがたい。
とは言え、同盟国にばかり頼っていてはそれもまた我々の信頼失墜にもつながりかねぬ。目の前の敵軍を早々に打ち破り、助力に向かうぞ」
1100月7月20日。
フライレ峠から、トゥデラ城を包囲するカスティーリャ軍を見下ろすアル=ファドルは、そう言って各部隊に伝令を送る準備を進める。
「陛下、まさかもう突撃を命ずるつもりですか? まだ西方のアフマド様の部隊との合流も済んでおりませぬ。時期尚早では――」
「俺を誰だと思っている」
狼狽える親衛隊長にニヤリと笑い、アル=ファドルは兜に手をかける。
「アバディーンにおける無謀の英雄、アル=ファドルとは俺のことだ。ベラス将軍のグレドスの奇跡ほどではないが、名誉を欲しかりしものは我についてこい!」
「――将軍、陛下が既に突撃を開始したようです」
「だろうな」
報告に来た副官に、アフマドは嘆息しつつ応える。
「我々も行くぞ。同盟国より遅れれば、王国第一軍の名折れだ!」
国王アル=ファドルの先行突撃より始まったトゥデラの戦いは、すかさず合流したアフマド率いる王国第一軍や同盟国ジェリド大族長国軍も加わり、バダホス王国軍側の圧倒的優位にて推移する。
敵軍も必死で抵抗し、こちらの騎士たちも皆傷つき、重傷を負う者も出てくるが、逆にこちらの騎士アラーッディンやアブドゥル・ハーフィズなども活躍し、敵の重要な将兵を傷つけていく。
戦闘はまさに一進一退。共に大きく傷つきながらもその戦いは数日間にわたって続き・・・
ついに8月29日。この「トゥデラの戦い」に決着が付き、総勢1万6千以上の兵が入り乱れたこの激戦は最終的にはバダホス王国軍側の圧倒的勝利に終わることとなった。
これで戦意を喪失したカスティーリャ・アラゴン連合軍は降伏勧告を受諾。
3度目のバダホス-カスティーリャ戦争は開戦からわずか7ヶ月での終戦となった。
そして戦いを終えたアル=ファドルは、間髪入れずに軍隊を南方に差し向ける。
次なる戦いの相手は、反乱軍たちである。
狼を狩る者
1100年10月2日。
アル=ファドル率いる王国第一軍は、トゥレイトゥラ領のマディーナト・クーンカに到着していた。そこで敵城を包囲しつつ、同盟国たちの集結を待っていた。
一方、このクーンカから80㎞南に位置するアラルコンには、6,000を超える反乱軍の兵が集結しており、アラルコン陥落に向けて攻城戦を開始していた。
このクーンカの地で、一つの事件が起きる。
ある夜、占拠した砦の一つで夕食を取っていると、そこに慌ただしく使用人の一人がやってきて、叫んだのだ。
「我が主、それは毒です! 召使いの一人が・・・許してやってください、一口飲んだのですが・・・彼女が――彼女が死んだのです!」
それは、この砦の前の支配者アル=カーディルが仕組んだ罠であった。
この砦のことを良く知っている彼の手の者が、どこからか忍び込みアル=ファドルが飲もうとしていた水に毒を忍ばせていたらしい。
「――奴め。決して許さぬ。その身柄捕えた後は、必ずやその首を大地に晒して見せるぞ」
アル=ファドルは激しく怒り、テーブルを強く殴りつけた。即位直後は自信のなさが目立った彼も、先のトゥデラの戦いの快勝などを通じ、少しずつ本来の獰猛さを取り戻しつつあった。
アル=ファドルは同盟国の到着を待たずして南下を開始する。アラルコンを包囲する反乱軍主力といきなりぶつかり合うつもりはないが、これを迂回して南部の丘陵地帯へと回り込む進路を取った。
11月9日。
同盟国たちも集まってきた段階で、包囲されつつあることに気が付いた反乱軍はアラルコンの包囲を解き撤退を開始するが、そこですかさずアル=ファドルの軍が丘上から強襲。
最終的にムラービト朝軍、ハディース戦士団も加わった総勢1万2千の兵で6,000の敵を一方的に蹂躙し、これを「大虐殺」することに成功した。
これで反乱軍は散り散りとなり、孤立したアル=カーディル軍を執拗に追いかけたアル=ファドルは、ペドロチェの地にてこれを追い詰める。
一方、反乱軍の一角であるアル=カニスの軍勢もウクリスでムラービト朝軍に捉えられる。
合わせてトゥレイトゥラ首都アル=ムルークも王国軍別動隊によって包囲され、陥落は時間の問題となりつつあった。
「上出来だ」
アフマドの報告に、アル=ファドルは満足気に頷く。
「しかし先のペドロチェの戦いでは敵軍をほぼ壊滅させたと聞くが、アル=カーディルの身柄を捕えることはできなかったのか?」
「は。マッシヴァ将軍によってその間近にまで迫り、奴を負傷させることには成功したようですが、すんでのところで逃げられてしまいました」
「ふん・・・必ず奴を探し出し、その首を眼前にまで持ってくるのだ」
「は――」
ファドルの言葉に、アフマドは平伏し応える。
そこに、一人の男が近づいてくる。密偵頭を務めるジャミだ。
「陛下、マグリブにおいてアブー=バクル殿の支配に対抗する勢力による反乱が発生。ムラービト朝軍も間もなくイベリアから撤退せざるを得なくなるものと思われます」
「構わぬ。もはや反乱軍も破片の如し。我々だけで十分に撃破能うであろう」
「は・・・それが、もう1つ、不穏な動きが」
そう言うとジャミは声を顰め、主君に告げる。
「西方にて、アル=アッバース様がガルナータのタミム様と手を組み、蜂起する構えを見せているとの由。どうやら陛下の王位を狙い、自らが正当なるバダホスの継承者であると触れ回っているとのことです」
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「ベラス将軍の準備はまだか?」
「は。只今、将軍の御嫡男がアビラに向かっており、将軍と合流の後に兵を挙げる手筈となっております。我々もそれに合わせ、一斉に蜂起する形で、タミム殿とも示し合わせております」
「うむ。大義だ」
「あのアル=ムウタミドとか言ったかの、顔は醜いが、随分と鼻の効く男だ。かくも重大なる秘密を持ってくるとは」
「ええ。まさか、かのアル=ファドル殿が、狼王の実の子ではないなどと――しかし殿下、この話、本当に信用能うるものなのですか?」
少しばかり不安そうな表情を見せながら、アル=アッバースの側近たるシャムサディーンは主君に尋ねる。
「ふん・・・それが真実かどうかなど、大した問題ではない。奴の話は筋が通っており、そして奴はその話を王国内に広めると請け負った。
それに、このように国内が不穏な中で外征に手を出す暴君は、我々が誅さねばならぬ。狼王が実の兄を誅したように、これはアフタスの血の宿命であり、義務なのだ」
そう言ってアル=アッバースは残忍な笑みを見せる。
「最後の根拠は力だ。我々のもとにはかの英雄シル・ベラス将軍がいる*1。彼が味方につけば、大義でも実力でも申し分ない。兄上の命までも取るつもりはないが、大人しく御退位願おうではないか」
上機嫌のアル=アッバース。そこに水を差すようにして、慌てた様子の伝令が室内に入り込んできた。
「で、殿下――大変ですッ!」
「何だ、騒々しい」
不愉快そうに眉を歪めるアル=アッバース。しかし伝令は構うことなく告げる。
「――ベラス将軍が、蜂起しました。対象は・・・我々ですッ!」
「――ウマル様が託されたこの王国の、安定と秩序を犯す行いは断じて認めるわけにはいかぬ」
兵たちの前に立ち、「グレドスの英雄」シル・ベラス将軍は毅然とした様子で宣言する。
「アル=アッバース様と対立するつもりは我々には毛頭ない。しかし、アル=アッバース様とアル=ファドル様との対立は、我々が命に替えても止めなければならない。この王国は今や数多もの悪意と陰謀により、崩壊の危機に瀕している。我々はそれを見抜き、王国の秩序を守らねばならぬのだ」
ベラス将軍の言葉に、兵たちは歓喜で応える。一通り話し終えたベラス将軍は彼らの前を離れ、少し離れた位置でバツが悪そうに立ち尽くしている嫡男のシルに声をかける。
「我が子よ。これが私の答えだ。お前が誰に唆されたのかは知らぬが、ウマル様なくして今の私はなく、そしてお前もいなかったであろう。我々はこの王国とアフタス家の為に仕えることこそが一族の本望であり、これを汚そうとする勢力に与してはならぬのだ」
「アル=アッバース様も、何者かに誑かされていると?」
「そうだ。そしてその存在は、これからもこの王国を危機に陥れようとするだろう。我が子よ。私はもう長くはないが、我が名を継ぐお前は我が使命をも受け継ぎ、王国とアフタス家の繁栄を守り抜かねばならぬ。分かったな」
シルはこくりと頷く。将軍もそれを満足気に見つめた。
「――これで戦いも終われば良い。アル=アッバース様への対処は寛容にしていただけるよう、アル=ファドル様にも進言しておこう。今は、兄弟で争い合っている場合ではないのだから」
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アル=アッバース、そしてトゥレイトゥラ公に並ぶ国内最大規模のタイファ・ガルナータの「怠惰なるタミム」の反乱の兆しにさすがにアル=ファドル王も肝を冷やしたが、これはアル=アッバースの配下であった「英雄」シル・ベラスの蜂起という形で未然に防がれることとなった。
これで再び反乱軍に集中できるようになったアル=ファドルは、そのまま反乱軍の主要各都市を制圧し、1101年7月10日にはついにこれを降伏させた。
捕らえられたアル=カーディル・イブン・イスマイール。自らの命をも奪おうとしたこの男を「新たなる狼王」アル=ファドルは決して赦すことなく、直ちに所領剥奪の上、斬首の刑に処した。
同じく反乱を起こしたアル=カラスのアブド・アッ=ラフマーンは所領剥奪のみで赦され、身代金の支払いと共にその身柄を解放された。
そうして手に入れたアル=カラスの地は嫡男のアブー=バクルに、トゥレイトゥラの地は次男のタイイーブに渡し、一族による支配を強めていくこととなった。
かくして、1100年2月の第3次カスティーリャ戦争開幕から始まった一連の混乱は収束を向かえ、アル=アンダルスは暫しの平穏を手に入れることとなった。
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そして、1103年春。
「兄上。コティージャスの山でノロジカの群れが目撃されたとの報せがあります。ここでぜひ、兄上の武勇を世に知らしめ、その威信を高めることとしましょう。さすれば現在計画しているアラゴン攻めにおいても、国内の支持を得るのに役立つはずです」
主馬頭を務める弟のガーニムの勧めに従い、新たに獲得した領土の一つであるコティージャスの山中へと赴くアル=ファドルとその一行。
準備が整い、いよいよ狩猟を開始しようとしたその時、狩猟頭に任命されたアリアスからは、この近くに確かにノロジカはいるものの、それは小さく獲物としては決して魅力的ではない旨を告げられる。
「――いや、より猛々しいものを狩りたいものだな」
「畏まりました。それでは、向こうの森に、狼の群れが潜んでいるとの情報もあります。少しばかり危険ですが――いかがいたしますか」
「構わぬ。そうしよう。
我々は、いよいよ北のキリスト教国家を攻め滅ぼし、このイベリア半島を統一しなければならぬ。我々の敵は獰猛なる者たちであり、それに比べれば、狼共など恐るるに足らぬのだから」
アル=ファドルは森へと向かう道を歩いていた。傍には主馬頭のガーニムと狩猟頭のアリアス、そして数名のアル=ファドルの部下たちのみであった。信頼するアフマド・セビタ将軍は昨年秋に遠行したベラス将軍の後を継ぎ王国元帥となっており、多忙を極めていた。
「ようやく我が国も落ち着いてきたな。ベラス将軍は間に合わなかったが、俺はこの国を、生まれも言葉も、信仰さえも異なる者同士が認め合い、手を携えるような、そんな国にしたいと思っている。
お前も同じだ、アリアス。有能なる者を、信仰で差別したりするつもりはない」
アル=ファドルの言葉に、狩猟頭のアリアスは、感銘したような様子で頷く。
「有難きお言葉で御座います、陛下。我が力、陛下による理想の実現の助けに少しでもなれば光栄です」
「さて、陛下。見えてきましたぞ。あの森ですーー」
アリアスが差し示した先にある森の中に、アル=ファドルは入って行った。
それが、彼の人生における、最後の舞台となった。
「ーーまだ・・・まだ、死ぬわけにはいかぬ・・・まだ、俺は何も成し遂げていないではないか・・・
俺は、俺は狼王の子なのだぞ・・・!」
「ーー陛下、陛下の仰られる通り・・・狼は狩られるべきなのです。このイベリアは、我らのために」
イベリアは更なる混乱の中へと沈んでいく。
第5話、「疫病/王国の真の支配者」へ続く。
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*1:狼王死後の領土継承の際、ベラス将軍の領有する領地の首都エヴォラがバジャ公となったアル=アッバースの所領内に位置していたため、ベラス将軍はアル=アッバース配下となっていた。なおアル=アッバースはもともとバジャ公領内の土地を一つも持っていなかったため、バジャ公になるにあたり、べラス将軍の領地の首都エヴォラを勝手に奪い取ってもいる。