パラグアイ。
その他の多くの国と同様に、スペインの植民地・総督領としてその支配下に置かれていたその国は、1811年にラテンアメリカでは最初に正式な独立を達成した国となった。
その統治の序盤において大きな影響を及ぼしたのが、1814年に執政官に就任したホセ・ガスパル・ロドリゲス・デ・フランシア博士。1816年に終身執政官となった彼は、その絶対的な権力をもとに各種の先進的な政策を進め、西欧帝国主義への反逆とパラグアイの「自立」を目指して突き進んでいったのである。
だが、史実においては、彼の死後、その反帝国主義的政策を邪魔に感じていたイギリスの後ろ盾によって「パラグアイ戦争」が引き起こされ、パラグアイはフランシア博士が理想としていた自立を成し遂げることなく、その他多くの後進国と同様の道を辿ることとなる。
今回は、そんなパラグアイをプレイし、果たせなかった自立と、パラグアイとしての誇りを確固たるものとし、世界最高峰の国となることを目指していく。
特に新DLC「Colossus of the South」によってブラジル同様に多くの固有イベントが追加されてもいるので、その辺りも確認しながらプレイしていければと思う。
それでいってみよう。
Ver.1.5.12(Chimarrao)
使用DLC
- Voice of the People
- Dawn of Wonder
- Colossus of the South
使用MOD
- Japanese Language Advanced Mod
- Visual Leaders
- Universal Names
- Historical Figures
- Japanese Namelist Improvement
- Extra Topbar Info
- East Asian Namelist Improvement
- Adding Historical Rulers in 1836
- Interest Group Name IMprovement
- Western Clothes: Redux
- Romantic Music
- Cities: Skylines
目次
後編はこちらから
博士の死と初代大統領
パラグアイの1836年1月1日時点の指導者は、前述した通り1814年以降絶対的な権力を握り続けている「終身執政官」ホセ・ガスパル・ロドリゲス・デ・フランシア博士。「独裁的夢想家」という専用のイデオロギーを持っており、多文化主義やテクノクラシー、孤立主義を支持するというかなり独特なものである。
実際に国の法律も孤立主義を制定している。
これは彼が史実で推し進めた保護主義政策=外国の製品を国内に入れず、国民には国産製品のみを使わせることで、西欧的経済帝国主義の奔流に飲み込まれないようにした、ということを再現しているのだろうが、ゲーム的にはこの超極狭国家で輸出入をストップされたら地獄以外の何ものでもなく、単純に罰ゲームである。
また、専用の特性「Karai Guasu(偉大なる主)」も持っており、人気度と正当性にボーナスが付いている。
その他の特性は「野心的」「残虐」「博学」といったもので、まさに史実のフランシア博士を再現している。
そして、後継者として設定されているのは「秘書にして書記」ポリカルポ・パティノ。知識人指導者でもある。
同じく「独裁的夢想家」のイデオロギーを持っている正当な後継者だが、性格は「横柄」「几帳面」「天才的官僚」。
全体的にフランシア博士の劣化版といったところ。特に「横柄」な性格もあり、人気は極めて低く、支配者としては決して有能ではない。
※支配者の人気度は権力に影響するため結構重要である。
このままフランシア博士とその後継者による、独裁的夢想家による独自の政治が続いていくのかと思っていたが・・・
1836年10月25日。
史実よりも4年早く、フランシア博士が早速死んでしまう。
ここで選択肢が出てきて、「秘書にして書記」の後継者をそのまま次の支配者とするか、それとも史実通り軍部のクーデターによって、フランシア博士の甥で軍部指導者でもあるカルロス・アントニオ・ロペスを後継者とするかを選ぶこととなる。
せっかくの専用イデオロギーを持つ支配者の継続も魅力的だったが、孤立主義を外さないことにはどうしようもないのも事実のため、史実通りロペスのクーデターを選択。
「初代大統領」カルロス・アントニオ・ロペスが誕生した。
もちろん、独裁は続く。
しかし交易ができるようになったことで経済発展はぐっと楽に。
とりあえず余っている銃器を売りに出し、代わりに不足する鉄を隣国ブラジルから輸入していこう。
また、農村民を政府に入れた上で、「辺境地の植民地化」法を制定する。
これで隣接するグアラニーへの植民地を作成し始める。隣国アルゼンチンも同様に植民を開始しているため、時間の勝負となる。
また、皇帝を退位させ、寡頭共和制をスタートしていた隣国のブラジル合衆国から、防衛協定の申し出があった。
吹けば飛ぶような小国のパラグアイにとってはありがたい申し出。早速これを受け入れることとする。
この辺りで、国際情勢も確認しておこう。
ロシアではいつも通り中央アジア諸国家の併合に向けて動き出していたのだが、何とブハラ・ハン国に返り討ちに遭うという珍事が。
この戦争は結局ブハラ・ハン国の勝利に終わり、ロシアは逆にキルギスを奪われるという実に屈辱的な結果に。なお、このブハラ・ハン国はゲーム終了時まで生き残ることとなった。すごい。
また、フランスではルイ・フィリップが亡くなりわずか3歳の嫡男ルイス・ドルレアンが即位したことをきっかけに、溜まりに溜まっていた国民の不満がついに爆発。
共和制を求める大規模な反乱が巻き起こることとなった。
さらに、植民地化を進めていたグアラニーで、アルゼンチンの植民化に対する原住民反乱が勃発。
だがこれはアルゼンチン軍の攻撃により、一瞬にして鎮圧されることとなった。
やはり、隣国アルゼンチンの存在は脅威である。
このまま細々と、この小さな国だけで完結する経済を進めていては、早々に限界を迎えることとなる。
そのことを実感したロペスは、新たな政策を進めていくこととした。
その盟友として選んだ、実業家集団と共に。
パラグアイの夢
1848年9月5日。
初代大統領ロペスは憲法で定められた任期を迎え、本来であればその大統領職を後任のマリアーノ・ロケ・アロンソに引き継ぐはずであった。
しかし彼はその前に憲法を改正し、彼が死ぬまでその地位に居座り続けることを可能にした。
彼は前任のフランシア博士同様の終身独裁官となることを決めたのである。
さらに1850年には、息子のフランシスコ・ソラーノ・ロペスをアロンソの代わりの陸軍大臣に指名。
これはこの「アメリカのナポレオン」とまで称された若き男が、実質的なロペスの後継者となることが示されたのと同義であった。
まるで君主制国家のようなこのロペスの横暴が許された背景には、隣国アルゼンチンの不穏な動きがあった。
彼らはかつて幻に終わったリオ・デ・ラ・プラタ諸州連合の「復活」を目論んでおり、当然パラグアイの地も手中に収めようと画策していたのである。
この国家の危機を前にして、国民――というよりは、政治を動かしうる上層部の貴族、聖職者、士官、そして資本家たち――は、民主主義よりもより強力なリーダーの存在を求めていたのである。
そんな彼の最初の政策はもちろん国家の経済的基盤の確立と軍備の強化であった。
そのための第一歩として、ロペスはまずは軍事制度改革へと着手した。
「ロペスの奴が、軍事制度改革を進めようとしているだと?」
「ええ、奴はこれまで伝統的に行われてきた徴兵を主体とした制度から、専門の職業軍人を用意する方策へと切り替えようとしているようです」
「また、これまでの独自市場路線を切り替え、ブラジルの関税同盟に加入する方針との由。農業を中心に一次産業についてはブラジル産のものを活用し、国内では加工品など二次産業を中心に補助を行い、その開発に重点を入れていくつもりのようです」
「我らの権利を切り崩すつもりか、若造め。フランシア亡き後の権力掌握を、誰が手伝ってやったと思っているんだ・・・」
ギリギリと歯軋りをするその男はマヌエル・アントニオ・オルティズ。国内の地主層を纏めるリーダーであり、先達てのクーデターにおけるロペスの協力者でもあった。
「奴の背後には国内の資本家たちをまとめ上げているマヌエル・カバリェロの存在があるようです。おそらくは、政権運営の片輪を我々から奴らに変えるつもりかと」
「そうはさせぬ。サンタ・クルス将軍に連絡を取れ。代々の貴族の家系たる奴ならば我々の意向を汲んで動くはずだ。我々の経済の基盤たる農村を軽んじるなど以てのほか。我々を甘く見るならば、再びクーデターにてその政権、転覆させん」
その時、屋敷の玄関口から騒々しい物音が聞こえてくる。何事か、とオルティズと側近たちが身構えるが、やがてその一団は荒々しく客間に入り込んできた。
「――失礼、閣下。火急の用ゆえ、御無礼御堪忍を」
「サ、サンタ・クルス将軍・・・丁度貴様の話をしていたところだった。しかし、何用だ、このように騒々しく・・・」
「閣下・・・ロペス大統領閣下の御命令にて、貴公の逮捕を執り行うべく参りました。罪状は、官憲に講じた各種賄賂及び不正な蓄財と脱税にて・・・」
「な、何――貴様ッ、儂を裏切るのかッ!! これは国家そのものに対する裏切りと同義だということを、分かっているのかッ!」
「――この国の持ち主は変わったのですよ、閣下。これまでは貴公ら貴族のものだったかもしれない。しかし、スペインからの独立を経て混乱したこの国は、最初はフランシア博士の所有物となり、そして今は――我々軍人の所有物なのです」
「おのれ・・・分からんのか、土地に根ざさぬ国家など、所詮は夢幻。フランシアの命の如く、永遠など存在しない。貴様らの国もやがて、帝国主義の奔流に飲み込まれ、粉微塵となって大地に還る他なくなるだろう!」
「そうさせぬ為にこそ、我々は動かねばならぬのです。博士が存命ならまだしも、遺された無能な我々は、あらゆる手段を使って足掻くほかない。
お連れしろ――丁重にな」
サンタ・クルス将軍の背後に控えていた兵士たちが一斉部屋の中に雪崩れ込み、オルティズらの身柄を拘束していく。
こうして、これまで軍部と共に政権を担ってきた地主層はこれを追われることとなった。
「――計画通り運んでいるようですな、大統領閣下」
薄暗い部屋の中で、国内最大の実業家であり、資本家勢力の実質的なまとめ役となっているマヌエル・カバリェロが呟く。
「先達て閣下が承認してくださったブラジルの関税同盟入りを機に、国内の経済は更なる発展を遂げております。加入前と比べ、その総額はおよそ1.5倍に」
「一方で、今度は労働力が少しばかり足りません。現在西方にアルト・パラグアイ植民地を広げておりますが、そこにいるのは我々の差別対象となるグアラニー人たちばかり」
「彼らをこの首都アスンシオンに移住させ新たな労働力とさせる為にも、現在の移住規制の撤廃も是非とも進めて頂きたく」
「良いだろう。だが忘れるな? 君たちにこうして便宜を図っているのは君たちの富を大きくする為のものではない。最終的に我々の『夢』の実現に資するものでなくては」
「分かっておりますよ、閣下」
カバリェロは頷く。
「我々にとってもその『夢』は望ましいものとなります。いずれにせよこのアスンシオン周辺だけではあまりにも土地も人も少ない。拡大を図らなければならない以上、その道は通らざるを得ない道なのです」
「そして、すでにその計画もある。ご安心下さい。我ら実業家集団総出で、閣下のお手伝いをさせて頂くことを約束します」
カバリェロの言葉通り、彼らの協力を得てパラグアイは次々と軍備を整えていった。
まずはフマイタ要塞。首都アスンシオンを守るための強固な最終防衛ラインを構築する。
続いてエル・ロサド鉄工所を建設し、武器製造に向けて全力の投資を行う。
合わせて息子のロペス陸軍大臣を中心に、兵士たちを南米最強の部隊とするための訓練と思想統制を進めていく。
それらすべての準備が整ったとき、ロペスは大統領宮殿パラシオ・デ・ロス・ロペスのバルコニーに立ち、集まった民衆に向けて熱く語りかけた。
「アスンシオンとパラグアイ国内の善良な人々よ、私ロペスは、片手に剣を持ち、もう片方の手に秤を持ってやってきた。今日、私はパラグアイの夢、帝国主義の諸外国のくびきから解放された黄金の未来について語ろう。鎚によって、マスケット銃によって、そして勇敢な男たちの意志によって、我らが国民は世界の舞台で正当な地位を得る!
Adelante(前進)!」
そして、ロペスは命じる。
隣国アルゼンチンに向けた、全面戦争を。
アルゼンチン戦争
開戦に先立ち、ロペスは十分な「事前準備」を行うことを怠りはしなかった。
まずは隣国ブラジルに交渉し、借りを作る代わりに参戦を認めさせた。
さらにパラグアイに対し守護的な態度を見せているフランス共和国にも接触。軍事的援助こそ引き出すことはできなかったものの、急速な軍拡により膨れ上がったパラグアイの負債を全て引き受けてくれるという寛大な申し出を頂くこととなった。
もちろんこれも彼の国に大きな借りを作ることにはなるが、構わない。まずは目の前の確実な成功がロペスには必要であった。
そして軍隊の動員を仕掛ける。パラグアイ陸軍の総指揮官は息子のロペス将軍に任せる。「砲術指揮官」に「防衛戦略専門家」。攻防共に担える実に有能な男だ。
補給物資は、砂糖が余り気味のため、チョコレートの配給を許可する。
これら全ての準備を整えた上で、1862年12月24日。
ロペス大統領はアルゼンチンに対し宣戦布告。コリエンテス、そしてサンタフェの地を要求し、全軍でアルゼンチン領に侵入する。
戦闘は全く問題なし。ブラジルの助けは不要であったと言えそうなほどに。
さすがに時間が経ってくると、アルゼンチン軍側も徴兵で数を揃え始め、戦線は膠着し始める。
ロペスは追加の物資支援を決定。武器をより充実させ、戦線の攻防能力を向上させる。
さらに前線のロペス将軍には「集中砲火」の指示を出す。勝利時の占領地は少なめになるも、敵の士気を減らし壊滅させやすくなる。
これらの対応により、再び侵攻は順調に推移していくことに。
さらに1863年の春になると、アルゼンチン南方の植民地にて先住民族たちの蜂起が発生する。
全軍を北のパラグアイに投入していたアルゼンチン軍はこれに対抗する術はなく、あっという間に首都ブエノスアイレスをこの先住民たちによって制圧されてしまった。
先住民とは思えないほどの統率力を見せたこのマプチェ人たち。調べてみると、どうやらその首長の座に、本国フランスを追放されていたオルレアン王家のフランソワ・ドルレアンが就いているようで、彼の指揮のもと、まるで近代軍の如き動きを見せるマプチェ軍の働きでアルゼンチンを苦しめていったのである。
もはや、アルゼンチンは成す術もなし。
1863年10月7日。開戦から1年も経たずして、アルゼンチンのドミンゴ・サルミエント大統領は、パラグアイの全要求を無条件で受け入れることに決めた。
これで目的としていたコリエンテスとサンタフェを手に入れたロペス。
一旦の「夢」は実現したことになる。
が、これで「前進」を止めるつもりは彼には微塵もなかった。アルゼンチンとの間に結んだ5年間の停戦期間が明ける1869年に再び攻め込むことを考え、彼は更なる演説によって兵士たちを鼓舞し、5年後の再戦に備えさせることとした。
そして、その予定通り、1869年2月8日に再度の宣戦布告。今度はその領土全てを要求。
前回の戦争でブエノスアイレス含む主要な都市を失ったアルゼンチンにはもはや抵抗できる兵力は残っておらず、わずか5ヶ月後の1869年7月16日。パラグアイは全面的降伏を認め、「第2次アルゼンチン戦争」は終結する。
これにて、アルゼンチンという国はこの世界から消滅した。
そしてそのことは、アルゼンチンが請求権を持っていたために植民が行えなかったメンドーサ・ブエノスアイレス方面への「植民」をパラグアイが行えるようになったことを意味していた。
だが、これは別の副産物を生み出す事にもつながった。
すなわち、イギリスによる南米植民の開始。まるでパラグアイによるアルゼンチン消滅を待っていたかのように、速攻でイギリスがブエノスアイレスへの植民を開始したのである。
当然、人口比から考えて、イギリスの植民スピードにパラグアイが勝てるわけはない。
ブエノスアイレスへの植民は諦め、メンドーサへの植民を優先させる。メンドーサは硫黄や石炭など、パラグアイ本国では確保できない鉱物資源が豊富で、重要度は高かった。
ただ、いずれはこのメンドーサも大半がイギリスの支配下に入ることになるだろう。
パラグアイにとって、イギリスという国の存在もまた、いつの日か打倒しなければならない障害となったわけだ。
そして、同時期に、もう1つの大きな出来事が発生する。
すなわち、フランシア博士の後を継ぎ、このパラグアイを史実における敗北の運命を回避せしめ、「夢」を叶えた男、ロペス大統領の死である。
この死をきっかけとして、パラグアイは大きな転換点を迎えることとなる。
その先にあるのは、果たしてフランシア博士の夢見た真の自立した強大なるパラグアイなのか、それとも史実同様に、列強の中に囲まれ沈没していく苦難のパラグアイなのか。
物語は後編へと続く。
アンケートを作りました! 今後の方向性を決める上でも、お気に入りのシリーズへの投票や感想などぜひお願いします!
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