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【Vic3/Victoria3】世界で最も豊かで幸福なスイスの作り方① 再生と変革の時代(1836-1856)

 

前回のオーストリア編で軍事に関してはある程度確認した為、今回は新バージョンでの経済面をじっくりと確認するプレイをしたいと考えた。

その上で選んだのがスイス。完全内陸国で2州しかなく、政体的には随分と改革が進んでいる先進国ではあるものの経済的な伸び代が少ない、代わりに管理は非常にしやすい国家だ。

このスイスでなんとか経済成長を成し遂げ、1936年時点で「1人あたりGDP」と「生活水準」の1位、すなわち「世界で最も豊かで幸福な国」を実現してみせようと思う。

 

今回はひたすら内政を進めていくことになるだろう。

それに合わせ、AARの書き方も少し変えていきたい。ここ最近は物語調に重点を置きすぎて、ゲーム的な部分が分かりづらくなっているのではという懸念があった。

よって今回は可能な限りゲーム的な部分の説明も多めに盛り込んでいきたいと思っている。どちらが良いかなど、可能であればアンケートやコメントやXで意見していただけると幸いだ。

 

それではいってみよう。

 

 

Ver.1.5.13(Chimarrao)

使用DLC

  • Voice of the People
  • Dawn of Wonder
  • Colossus of the South

使用MOD

  • Japanese Language Advanced Mod
  • Visual Leaders
  • Historical Figures
  • Japanese Namelist Improvement
  • Extra Topbar Info
  • East Asian Namelist Improvement
  • Adding Historical Rulers in 1836
  • Interest Group Name Improvement
  • Western Clothes: Redux
  • Romantic Music
  • Cities: Skylines
  • Beautiful Names
  • ECCHI

 

目次

 

第2回以降はこちらから

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「再生」時代

1836年1月1日時点でのゲーム上での首相*1は、農村民指導者のカール・フリードリヒ・チャーナー(Karl Friedrich Tscharner)。史実における1836年の連邦議会議長である。今で言うところの大統領にあたる地位の人物であった。

フランス革命期に近代的な中央集権国家としての「ヘルヴェティア共和国」が成立するも、スイス特有の各州の極度に高い独立性がこれを阻害し、間もなく崩壊。ウィーン会議を経て多分に漏れず「王政復古」を迎え、従来の国家連合の形が復活した。

それでも、これもまた19世紀欧州国家の例に漏れず、フランス革命の影響による自由主義者たちの勢いは時を経るごとに増加していき、1830年のフランス七月革命の影響も受け、1830年代からリベラル派の台頭とそれに反発する保守派の揺り戻しという激動の「再生」時代を迎えていたのである。

1836年はまさにそんな時代のさなか。リベラル派が力を持っており、チャーナー率いる農村民たちによる「農業党」が最大勢力。保守党がこれを追い、知識人たちによる自由民主派がさらにこれを追う、という政治状況となっている。

農村民勢力が強いのは史実の1831年にスイス「再生」時代の幕開けとして行われた農民解放を反映し、「自営農」法が最初から制定されていたのも理由だろう。

故に、後進国と異なり政治改革自体の難易度は低い。心置きなく経済に重点を置くことができるというわけだ。

 

初期は定石通り建設局を安定稼働させるための伐採所→工具工房→鉄鉱山→建設局製法変更→伐採所と工具工房の製法変更→「大気圧機関ポンプ」アンロックして並行して石炭を掘りつつ鉄鉱山の製法変更して生産量アップ、という建設手順を進んでいく。

資源は豊かではないが、産業発展に「最低限」必要な石炭、鉄、木材はある程度豊富に揃っているのが救いだ。

 

合わせて初期の技術自力獲得ルートは下記の通り。

法律改定については以下の通り進んでいる。

初期地主指導者が民主主義者イデオロギーを持っていたため、いきなり選挙制の官僚を採れたのはでかい*2。その後も民主主義者の地主が多く輩出され、普通選挙制定までかなり楽に進めた*3

スイスは初期状態で宗教学校が制定されておりかつ投資レベルも3と大きい。識字率も初期から50%以上あり、技術の普及も多く得られ技術伝播もサクサクと進む。

その上で開始早々にPOP支持だけで公立学校の政治運動が始まり、早い段階でこれを制定することができた。

扇動者も、それを支持する利益集団もいない中で、百姓たちですら半数近くが公立学校を支持するという状況であった。

 

その次に(初期段階で「移住規制なし」の法律が制定されているにも関わらず)移住規制を取ったのは、このタイミングでまた支持が落ち始めていた小ブルジョワの支持を10以上にするため。

このとき財政は大幅な赤字だったが、小ブルジョワの支持10以上ボーナス「国庫債券」が適用されただけで一気に6,000ポンドも赤字が減るというめちゃくちゃでかい効果となった。

ゲーム開始からちょうど10年が経過した頃である1845年12月20日に最初の「製鉄所」を建設。「鋼鉄」資源の生産を開始する。

あらかじめ「機械工具」の技術獲得により解禁させていた工具工房の「鉄製の道具」製法を採用し、工具の生産量を大幅に増加。

その大量の工具を利用して家具工場の高級品生産製法を「精密家具」に変更。

これで各国で高値で売れる「高級家具」を輸出して利益を出しつつ、上位製法の採用により機械工技師といった初期には存在しない職業も増やしていく。

経済の面では少しずつ、着実に近代化を進めていき、人々の生活も豊かになっていくスイス。

そして、政治の面でも、大きな変動が巻き起ころうとしていた。

 

 

「変革」時代

1851年夏。

年末の投開票を控えた選挙戦も大詰めを迎えつつある中、長期に渡り政権を担ってきた農業党に対する保守派勢力からの批判がこれまでにない盛り上がりを見せていた。

曰く、農業党政権は、国内の農家の利権確保を優先し、輸入穀物に高い関税をかけ続けており、それが国内の食料品価格の高騰に拍車をかけているのだという。

この批判に対し、農業党政権はこれまでの圧勝に慢心をしていたが故か、ろくに取り合おうとせず、対策も後手に回る。そのこともまた、保守派勢力による格好の批判対象となったのである。

結果、11月13日に投開票が行われた1851年選挙は、わずかな差ではあるが保守党が勝利。

農業党からの政権交代が果たされた。

この事態を、当時の「首相」*4であったヨーゼフ・フランツ・カール・アムルヒンは、苦い顔つきで受け止めることとなった。元連邦議会議長ヨーゼフ・カール・アムルヒンの子である彼は、ドイツ語圏のルツェルンで生育したのち、ドイツ・ゲッティンゲンやフランス・パリの大学を出て、リベラルな思想を育んでいった。

1824年にスイスに戻り父の秘書を務めたのち、連邦国務長官を経て1831年から首相の地位についていた彼は、カトリック教徒という立場から所属政党としては保守党に身を置きつつも、その在任期間中に進展した自由主義運動を密かに後援する立場を取っていた。

だが、そこからの今回の保守反動。

アムルヒンは、自らが行動に出るべき「時期」が来たことを悟った。

 

「邪魔するぞ」

ノックと共にかけられた声にアムルヒンが返事をするより先に扉が開けられ、一人の男が入ってくる。

男の名はフリードリヒ・ルートヴィヒ・フォン・ケラー。ベルリン生まれでゲッティンゲン大学時代にアムルヒンと知り合い、1831年からはスイスの司法長官を務めてもいた男であり、現在は「自由民主派」指導者として、農業党に代わり保守派に対抗するリベラル勢力の旗頭として注目を集めていた。

「聞いたか、アムルヒン」

挨拶もなく不躾に尋ねるケラー。アムルヒンもそんな彼の性格をよく理解しており、特に不快に感じることもなく返す。

「フランスのことだろう? 革命で七月王政が倒れ、ナポレオン3世も追放。『第二共和政』が開始された件」

「ああ、その通りだ」
言いつつ、自分が言おうとしたことをすべて先んじられたことにやや不満気な様子を見せるケラー。だがすぐに気を取り直して、続ける。

「フランスを動かした革命の波は、このスイスにも入ってきている。先日もローザンヌで暴動が巻き起こり、次の住民投票で自由主義的な新しい憲法が採択される見通しだという。この国も、いよいよ変革の時代に入りつつある」

「お前はどうするんだ? アムルヒン」

ケラーの言葉と鋭い視線を、アムルヒンは受け止める。当然これもまた、彼の言わんとしていることは理解していた。

「立ち上がるなら、今だ」

アムルヒンの言葉に、ケラーは頷く。

「お前が立ち上がるならば、私も全面的に協力する」

「ありがとうーー分かった。私もまた、これまでの中立の立場を止め、自由とスイスの新たな時代のための戦士となろう」

 

かくして、アムルヒンは同年3月に首相を辞任し、新たに「自由民主党」を結党。ケラー率いる自由民主派もこれに合流し、同年11月の選挙に向け、農業党・保守党を大きく上回る最有力候補として一気に躍り出た。

 

アムルヒンは訴える。この国は、今こそ変革の時であると。

「50年前、この国は外からの圧力により、自由や民主主義を知らされた。それは暴力的であり、我々の実情を知ろうともしない無慈悲なものでもあり、これを我々は拒絶した。

 一方で我々はそこで目覚めた。子供のように跳ね除けたあの時代を経て、我々は青年となり、そして今、十分に成熟した。国内でも多くの国民が議論し、熟慮し、時には外にて学んだ。今改めて、我々自身の手で、その価値を確認するべき時が来た。

 それは再生であり――そして、新たな創造でもある。

 新たな時代を、新たなスイスを共に生み出そう! それは、私たちの手によって作られるのだ!」


かくして、1855年11月13日。
ヨーゼフ・フランツ・カール・アムルヒンと自由民主党によって、スイスの新たなる時代が幕を開けることとなる。

もちろんそれは、必ずしも安寧と幸福が約束された時代というわけではない。

むしろ、世界はこの後さらなる混乱を味わい、そしてその影響は着実にスイスに影響をもたらすこととなる。

性急な改革の果てに、現れるスイス国内の決定的な対立。

そして、経済の伸長もまた、定められた限界に直面していくこととなる。

 

果たしてアムルヒンは、そしてスイスは、この困難をいかにして乗り越えていくのか。

 

次回、第二話。

改革の代償」へと続く。

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1856年データまとめ

GDP:世界26位(513万£)

1人当たりGDP:世界24位(2.26£/人)

生活水準:世界22位(11.6)

1836年⇒1856年の収支推移

1人当たりGDPはまだまだ順位は低いが、最初の20年間でGDPはしっかりと6倍に成長した。ただ、ここまでは労働人口を気にすることなくひたすら成長を続けていた形だが、次の20年ではいよいよ「人口問題」に直面することとなる。それをどう乗り越えていったのか。

なお、1856年時点でのスイス全体での施設状況は下記の通り。

税収は自動で成長する市街地を除けばライ麦畑が最大。まだまだ平均生活水準も低い1856年時点では大半のPOPの消費物の第1位が穀物であり、古いバージョンと比べ穀物の消費量が増えたこともあり、需要がかなり大きくなっている。これらを育てる農家の生活水準も政治力も高い状態だ。

一方で独立市場*5で産業の成長が十分ではない現在、最も平均賃金の高い施設が取引所と大学・行政府。ゆえに小ブルジョワや知識人の生活と政治力は次第に高くなっていき、最後の自由民主党勝利へと繋がった。

 

1836年⇒1856年の職業・文化・宗教の人口比率推移

この20年で大幅に百姓が減り、労働者が増えるのは中小国の常。この国の特徴は農家が初期状態で最も政治力が高く、20年経ってもなおも資本家に次ぎ2位につけているという事実。商店主・公務員・学者が20年で少しずつ力をつけてきていることもよく分かる。
アレマンはスイスのドイツ語圏、フランス・プロヴァンスはスイスのフランス語圏。前者はプロテスタントが多く自由主義的傾向があり、後者はカトリックが多く保守的傾向が強い。1836年時点では保守傾向の強いフランス・プロヴァンスとカトリックが共に(人口的には少ないにも関わらず)政治力が高かったものが、20年かけて減衰していく様が見て取れる。北イタリア人の比率が減っているのはアレマン人に同化していっているから。

これらのデータが次の20年でどう変化していくかもまた、見ものである。

ガス灯が点き始めた1856年のスイス首都・ベルン。


第二話「改革の代償」へと続く。

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*1:スイスは初期から議会共和制を制定しているため、国家の代表は首相となる。

*2:スイスの初期官僚制制度は世襲制の官僚。そこから任命制ではなく選挙制にしたのは、民主主義者を戴く地主と小ブルジョワの支持を10以上にしてボーナスを得るため。地主の投資プール効果ボーナスも小ブルジョワの利子率マイナスボーナスもどちらも非常に価値が大きい。

*3:なおスイスは初期から制限選挙が制定されている。

*4:ドイツや日本のそれと異なり、国家の行政の長ではなく、役職の任命などを実務とした象徴的な役職。現在まで存続している。ゲーム上の首相は現在の大統領にあたる連邦議会議長。

*5:今回のプレイはどこの国の関税同盟にも入らない縛りでやっている。