史実では、英露のグレート・ゲームに巻き込まれ、その主権を奪われる結果となった中央アジアの小国、アフガニスタン。
この世界では、その運命を乗り越え、改革と革命を経て1900年、ついに「列強」の地位にまで昇り詰め、英露とも肩を並べることに。
そしていよいよ、彼らは最後の目標へと突き進むこととなる。すなわち、自分たちを好き勝手扱ってきた英露に対する「復讐」。そして、彼らによって食い荒らされた中央アジアから、彼らの存在をすべて駆逐すること。
黒き帝国、アフガニスタンの最後の戦いが始まる。
目次
Ver.1.7.2(Kahwah)
使用DLC
- Voice of the People
- Dawn of Wonder
- Colossus of the South
- Sphere of Influence
使用MOD
- Visual Leaders
- Universal Names
- Japanese Namelist Improvement
- Extra Topbar Info
- Romantic Music
前回はこちらから
アジア自由連盟
列強2位フランスとの戦いを、イギリスと共に勝利したアフガニスタンは自らも列強の仲間入りを果たした。
そんな彼らは、保護国下におく中央アジア諸国と共に、独自勢力圏であるアジア自由連盟を設立。
列強による植民地化の悲劇に見舞われ続けてきたアジア諸国の自由と独立を守るための軍事同盟として、その存在を高らかに宣言した。
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「此度の独自勢力圏の設立、ロンドンの政府としてはやや憂慮する向きもあります」
インド総督兼副王のジョージ・カーゾンは、カブールの大統領府にてそのいつもの柔和な表情に剣呑な皺を加えてアフガニスタン大統領ナスル・アラー・ヤンを睨みつける。
「我々保守党が政権を握っている間はまだしも、政権交代が行われた際には、その方針の転換が余儀なくされることもありうるでしょう。
改めて確認したい。貴殿らはアジアにおける我々イギリスの利権を害する意図はないのだな?」
「もちろんですとも、閣下」と、ヤン大統領は柔らかな笑みで応える。
「我々の姿勢はあくまでも仇敵たるロシアに向けられたもの。アジアの安定と平和を何よりも望んでおられる貴国との同盟関係には何ら影を落とすものではございません。むしろ、より一層の協力をお願いしたいくらいです」
カーゾンは警戒するような表情を変えることはなかったが、それでも疑うことは止めたようだった。
「まあ、良いでしょう。ただし、協力を求めるためには、再度貴殿らにその『価値』を示してもらわねばなりません」
カーゾンの言葉に、ヤンは笑いながら頷く。彼も、今イギリスが置かれている状況については理解していた。
「先のフランスに続き、今度はオーストリア帝国が仕掛けてきたようですな」
「ええ。全く、愚かなことです。とはいえ我々としてはこの機に、北アフリカのオーストリア植民地を奪い取るチャンスにもなりうると思っています。先の戦争ではアジアの後進国にて活躍していただきましたが、今度はヨーロッパの地で、その列強としての資質を発揮して頂きたい」
カーゾンの挑戦的な視線と言葉にも怯むことなく、ヤンは頷く。
それは、アフガニスタンにとっても望むべきものであった。
彼らはこの後、更なる困難な戦いに向かう必要がある。
これは、その瞬間に向けての大いなる前哨戦となるのだ。
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1901年1月24日、オーストリアからの宣戦布告という形で、墺英戦争(マスカラ戦争)が開幕する。
開戦早々、アフガン海軍は英海軍と共同してオーストリア支配下の北アフリカ・マスカラへと上陸。直ちにこれを制圧する。
続いて英海軍はオーストリア本土のヴェネツィア・トリエステ方面への強襲上陸作戦を仕掛けるも、これはなかなか成功しない。
だが、その方面にオーストリア海陸軍が気を取られている隙に、アフガン海軍はオーストリア領の南端、ダルマチアへと上陸作戦を仕掛ける。
これが夏が終わる頃には無事成功。
一気にこの方面から侵攻を仕掛け、12月頃までにはその占領地は大きく広がることとなった。
これでオーストリアも降伏を認める。1902年2月9日に結ばれたポーツマス条約でオーストリアはマスカラの地をイギリスに割譲すること、そして莫大な賠償金をアフガニスタンに支払うことに同意した。
これでアフガニスタンは、フランスやオスマン帝国からの賠償金と合わせ年間434万ポンドもの賠償金収入を得られるほどの財政的余裕を得ることに成功。
アフガン政府はこれを、すべて最先端の軍事研究投資へと費やすことに決める。
列強という肩書きが名ばかりのものでなく、軍質も含め第一線級のものとならなければ、彼らの「復讐」を果たすことはできないのだから。
その甲斐あって、アフガニスタンは次々と最新式の技術の獲得を進めていく。
もちろん、その代償としてイギリスとの蜜月関係を続ける自由党政府に対しては、歴史的に親ロシア派・反英国派の貴族たちを中心に、痛烈な反政府キャンペーンが展開される。
だが、それが現在の連立政権を構成する自由党・農業党の優位を崩すような事態には発展しなかった。1904年選挙でも両党で議席の4分の3を占め、圧倒的な正当性でもって政府を支配することに成功したのである。
そしてついに、1908年。
「復讐」を果たすべき好機が、訪れることとなる。
復讐の時
1908年1月8日。
首都カーブルに密かに集められた閣僚たちは、その「決断」を果たすための最終討議を行っていた。
「現在ロシアはフランス・オスマン帝国・スカンディナヴィア帝国の同盟軍に攻められ、劣勢に立たされているとのこと。首都サンクトペテルブルク付近にも敵軍の上陸が認められ、中央アジア方面に兵を残せるような状況ではなさそうだ」
先の選挙後に大統領職を自由党党首のムラド・ドゥラーニに譲った後、外務大臣に就いたナスル・アラー・ヤンの言葉に、一同は頷く。
「イギリスも問題なく協力してくれるようだ。トルクメニスタンの解放という条件だけで同意してくれるとのことで、破格と言えるな」
「またイギリスへ頼ることについて、保守派が随分と文句を言ってきそうだがな」
閣僚の一人が皮肉を込めて告げると、何名かが含み笑いを漏らした。
「当然、気持ちは分かる。我々は何度も彼らに辛酸を舐めさせられてきた。50年前のロシアの侵略のときはもちろん、先達てのペルシアへの侵略もまた、我々アジア人に対する挑戦と言える」
自由党党首、そして現大統領たるムラド・ドゥラーニがそう告げると、居並ぶ閣僚たちの表情も真剣なものとなった。
その思いを、共有していない者はこの場にはいない。今、イギリスの力を借りるのはあくまでも、大敵の一人たるロシアを倒すためだけの「手段」に過ぎない。
もしも状況が大きく変わり、また別の「好機」が訪れるのであれば――そのとき、決断を迷う者はいないだろう。
「カシム提督、準備は問題ないな」
大統領の言葉に、壁際に並んでいたファイザル・カシムは、自信たっぷりに応える。
「ああ。我らが精鋭第一艦隊は、最新鋭のモニター艦・装甲艦共に完璧な整備状態となっており、いつでも世界の海にその威力を示すことができる」
先のフランス戦争、オーストリア戦争でもその勝利の要となった提督の言葉は、その場の全員の背中を押すこととなった。
これを受けて、大統領はついに最後の決断を下す。
「良かろう。これより我々は、ロシア帝国に宣戦布告する。50年前のあの屈辱への、復讐を果たすべきときがついに来た。
この勝利の先にこそ、我々アフガニスタン、そしてアジア自由連盟の未来はある。そして敗北の先には何もない。
一同、心して掛かれ。そして共に、勝利と自由の喜びを分かち合おう!」
1908年3月4日。アフガニスタン共和国は、ロシア帝国主義により不当にその自由と尊厳とを奪われた中央アジアの諸国家の独立を掲げ、これに宣戦布告を宣言した。
すぐさまイギリス帝国がこれに同調し、ロシア帝国側にも防衛協定を結んでいたプロイセンが参加し、総勢30万vs27万の世界大戦となった。
開戦と同時にアフガン陸軍の全部隊が手薄なシルダリヤ方面へと侵攻。
この方面の守備を任されていたニコライ・ロマノフ大公も必死で防衛しようとするも、万全の準備を整えていたアフガン軍を前にしてなすすべもなく撤退。
1908年6月時点でカザフスタン方面のほぼ全域を制圧し、アフガニスタン軍の圧倒的優勢は揺るぎないものとなりつつあった。
さらに、この状況に追い討ちをかけるように、ファイザル・カシム提督率いるアフガニスタン第一海軍はロシアの喉元、バルト海へと遠征を仕掛ける。
この地で、ロシア側の通商船を狙って無数のモニター艦で襲撃。
ロシア市場で弾薬が枯渇し鉄鋼も不足するなど、経済的にも追い詰められていった様子が伝わってきていた。
当然、ロシアもこれを黙ってみてはいられない。バルト艦隊で迎撃に出る。
しかしここでも、物量差によるアフガン海軍の圧倒的優勢に違いはなく、バルチック艦隊は海の藻屑へと成り果てたのである。
こうして制海権も手に入れた英富連合。イギリス海軍は敵同盟国プロイセンにも上陸し、これを蹂躙。
1908年末には早くもプロイセンが降伏するなど、もはやロシア連合側の敗北は時間の問題となりつつあった。
しかし、ここで事態は急変する。
何と、英軍がこの対ロシア戦争で手薄になった隙を突いて、ペルシアが再びオスマン帝国と結びイギリスに対する「復讐」戦を開始したのである。
「状況の大きな変化」が訪れた。
アフガニスタン首脳部の、最後の決断の時が迫っていた。
帝国の墓場
1909年6月。
すでに戦線から英軍の姿は消えていたものの、ロシア軍に抵抗する術は失われていた。
6月2日に両国の間に和平条約が締結される。アフガニスタン側の要求をすべて飲み込む、完全なロシアの敗北であった。
しかし、その勝利の余韻に浸る余裕など、カザフスタン共和国首脳部には存在しなかった。彼らはすぐさまカブールの官邸に集まり、方針の協議を開始していた。
「露軍との戦線に張り付けられていた兵たちも急ぎ撤収させ、英軍は必死でペルシア方面の防衛にこれを回そうとしているようだが、事態は劣悪。現地住民の反乱と相まって、英領ペルシアの地は次々に奪還されつつある」
「さらにアフリカ方面でも反乱が頻発しているなど、英帝国は今やその存亡の危機に立たされて言って過言ではないだろう」
ヤンの言葉を、一同は静かに受け止める。彼らは皆、自分たちが今、思いがけぬ好機に恵まれつつあることを理解していた。
あとは決断するだけだ。
「分かった」
ドゥラーニ大統領は頷く。かつてのサドーザイ朝最後の君主シュジャー・シャーの末裔として生まれつつも王党派たちとは縁を切り、在野の一国民として数多くの困難を乗り越えながらここまで上り詰めてきた男が、祖国の悲願達成のために最後にして最大の困難たる壁に立ち向かう決断を下す。
「これはアッラーが我々にもたらした最大の好機である。我々はその使命に従い、決断せねばならない。
すべての帝国主義に引導を渡してやろう。我らのこの聖なるアジアから、奴らを引き摺り出すのだ! ここが奴らの・・・帝国の墓場であることを思い知らせよう!」
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1909年6月6日。ロシアとの講和条約を結んだわずか3日後、アフガニスタンは間髪入れずにイギリス帝国へと最後通牒を突きつけた。それは、50年前に彼らがアフガンから奪い取ったバルーチスターンの地の「返還」を求めるもの。
報せを受けて慌てて英軍はこの地に兵を集めようとするが、すでに世界中で戦火が巻き起こり、ロシアとの戦争からの継続で疲弊しきっていた英軍は十分にはその数を集められずにいる。
アフガニスタン第二軍総司令官ファズロラー・カシム少将は、自ら4万の兵を率いてバルーチスターンとの国境沿いの山岳地帯を強襲。
イギリス軍は最新式の塹壕技術によってこれを防備しようとするが、倍以上の兵力差を前にして、着実に劣勢へと陥っていく。
そしてペルシャ湾でもまた、アフガニスタンの商船を破壊し経済的に疲弊させようとする英海軍の襲撃船を、ファイザル・カシム提督率いるアフガン海軍が次々と迎撃。
開戦からわずか半年。ペルシアからも、そしてバルーチスターンからも、全ての英軍が駆逐されることとなったのである。
そして1910年10月28日。
イギリスはついに抵抗を諦め、正式にバルーチスターンの地をアフガニスタンに返還することを認める条約を締結。
アフガンと中央アジアの同盟国たちは勝利した。
彼らの土地への不当な侵害を行うすべての帝国主義者たちへの聖なる復讐の戦いに。
そして、グレート・ゲームは終わりを告げたのだ。
物語はこれで終わりを迎える。
あとは最後に、自由と永久の平和を手に入れたアフガニスタンの、繁栄の果てを確認していこう。
1936年時点のアフガニスタン
1936年1月1日。
自由と独立を巡る戦いに勝利してから20年以上。
アフガニスタン共和国の大統領は国家の英雄たるホッセイン・カシムの孫にしてファイザル・カシムの息子でもあるアボルガセム・カシム。
1920年代に結成された労働者政党である「社会民主党」を率いる立場である彼は、1928年の単独勝利以来、第一党と大統領の座を守り続けている。
この社会民主党政権下において国内では「普通選挙」「義務初等教育」そして最低賃金や危険な労働環境の撤廃を定めた「労働者の保護」法など、各種先進的な法制度も次々と整備されていく。
国民の平均生活水準も確実に増していき、列強の名に相応しいものにまで成長しつつあった。
経済について言えば総額1億ポンドを超え、世界第6位の経済大国に。
国土としては北方にカザフ人たちによる国家を成立させてアジア自由連盟の一員とするなど、中央アジア世界の名手としての存在感を着実に高める20年となった。
その間に、世界では様々な動きが巻き起こっていた。
1922年にはペルシア帝国で幼君が即位したのをきっかけに、革命家ミルザ・クッチク・ハーンが大規模な反乱を勃発させる。
当時の農業党政権(社会民主党発足前で、アボルガセム・カシムもここに所属していた)はミルザ・クッチク・ハーンの求めに応じ、反乱軍の支援を決定。
半年後にはペルシア帝国は滅び、ここにイラン民主共和国が成立することとなったのである。
さらに、もう1つの大事件はイギリスの内乱。1925年のクリスマスに勃発した労働党党首ラムゼイ・マクドナルドによるプロレタリア革命。
これに乗じ、イギリス領インドでも独立を求める大内乱が勃発したのである。
アジアの自由と独立を旗印とするアフガニスタン(当時は再び自由党が政権を奪還)は、このインド独立勢力への加勢を決断。
自らも父たちと同じく軍人としてこの戦いへと赴いたアブドラジム・カシムの活躍もあり、最終的には1927年にイギリスは降伏。
最終的にはインド人自らの独立国家ベンガル共和国をこの地に成立させることに成功したのである。
その他の地域の情勢も見ていこう。
まずはヨーロッパ。インドを手放すことにはなったものの、プロレタリア革命自体は鎮圧することに成功したイギリスは君主制を維持。その他はプロイセンが弱体なまま以外はそこまで変な形にはなっていないように見受けられる。
と言いつつ、バイエルン「皇帝」オットー率いる「ライン同盟」がフランスが率いる勢力圏「パリ条約」に加入し北ドイツの広い範囲に影響を及ぼすなど、将来的な欧州での大戦を予感させるような不穏の兆しは見え隠れしている。
東アジアでは結局太平天国が最後まで中国の唯一の王朝として君臨。ただしずっと破産し続けていた。
なお、太平天国が勝ちすぎる現行の問題は、新バージョンですでに改善されているとのこと(どうやら太平天国反乱に必要以上のバフが入っていたらしい)。
日本も無事明治維新を終え、日本国を成立させていた!と思ったら・・・
大統領トクガワによる専制政治・・・一体何が起こっているのだ。
最後にもう少し国内の状況を眺めてみることにする。
まずは各種パラメータ。識字率は70%近く、議席の80%超を占めている社会民主党・農業党連立政権の正当性は100に貼りつき、体制派が急進派を大きく上回っている。革新は英国に並ぶ150台で、陸海軍も相当数用意できている。
アフガニスタンの生産品としては無線機・高級衣類が世界1位の生産を誇り、次いで電話・紙・アヘンも世界2位の生産量を誇ることに。なお飛行機も生産量2位だが、飛行機の技術は開発しておらず、これはアメリカ合衆国による投資の結果である。
投資と言えば本Verから追加された対外投資についても活発で、とくに相互国外投資権協定を結んだアメリカ自由州やアメリカ合衆国の石油リグの多くをアフガニスタンの資本家が所有。
これで実績「スタンダード・オイル」も解除することに成功している。
貿易の相手国としては独立したベンガル共和国や太平天国、オスマン帝国・アメリカ合衆国などが特に大きな相手となっており、基本的には大量の輸出で稼いでいるが、自給できないゴムは専らベンガル共和国からの輸入に頼っている形だ。
1935年12月31日時点の職業・文化・宗教状況は以下の通り。
総括としては、今回、英露を中央アジアから締め出してグレート・ゲームの勝利という達成に至ることができたが、それはあくまでもVer.1.7.2までの「AIの軍拡がほぼない」というバグによるもの、というのが大きい。それが改善された(むしろ軍拡し過ぎの?)Ver.1.7.3環境で同じように達成できるかは怪しい。
とにかく、所有権システムの変更により小国の改革がかなり苦しくなった。とはいえ、それも、以前の「どの国でも効率的にプレイすれば19世紀の半ば~後半には地主を虫の息にして先進的改革を進められる」という非現実性からの「改善」と言えなくもない。より挑戦的になった小国で列強を目指していくプレイはまたやってみたい。直近のバージョン(1.7.3)では奴隷制が地主の影響力を直接的に強化しなくなった(とは言え経済的間接的に強化する状態は変わらず)など、バランス調整は今後も続けられていくことだろう。
今回、勢力圏システムをそこまで活用できなかった面もあるため、次回はもう少し大国でのプレイを試みてみたい。具体的にはオスマン帝国などを検討している。
もしよろしければそちらもぜひ。
それではまた。
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