1821年にスペインからの独立を果たした新興国家「メキシコ」は、その最初の数十年間を混乱の中で過ごした。
その中心に常にいたのが、独立戦争の英雄アントニオ・ロペス・デ・サンタ・アナ将軍。
独立以後、何人もの皇帝や大統領を生み出してはこれを挿げ替え、常に権力を握り続けたメキシコの影の支配者であった彼は、1835年には自由主義改革の停止と議会の解散、連邦共和制を規定した1824年憲法の廃止を決定し、中央集権的な軍事独裁政権(「メキシコ共和国」)を創り上げた。
史実ではこのサンタ・アナ将軍による保守的な独裁体制は自由主義者たちによって打倒されるものの、その後も20世紀に入るまで何度も革命と改革が繰り広げられていった「メヒコ」。
その「新たな100年」を描いていくVictoria3プレイレポート/AAR第12弾「メキシコ」編。新DLC「Voice of the People」の新システム紹介なども触れつつ、見ていこう。
Ver.1.3.2(Thé à la menthe)
使用DLC
- Voice of the People
使用MOD
- Cities: Skylines
- Declare Interests Button on top
- Extra Topbar Info
- Historical Figures
- Improved Building Grid
- Japonism
- More Spreadsheets
- Romantic Music
- Universal Names
- Visual Leaders
~ゲームルール~
- 戦争による拡張をしない(旧領奪還を除く)。
- 「プレイヤーに対するAI挙動」設定は「無情」
- 「AIの敵対行為」は「高い」
- その他デフォルト設定
目次
第2回以降はこちらから
これまでのプレイレポートはこちらから
虹の旗の下で 喜望峰百年物語:ケープ植民地編。完全「物語」形式
パクス・ネーエルランディカ:オランダで「大蘭帝国」成立を目指す
強AI設定で遊ぶプロイセンプレイ:AI経済強化MOD「Abeeld's Revision of AI」導入&「プレイヤーへのAIの態度」を「無情」、「AIの好戦性」を「高い」に設定
金の国 教皇領非戦経済:「人頭課税」「戦争による拡張なし」縛り
Crusader Kings Ⅲ、Europe Universalis Ⅳのプレイレポートも書いております!
アンケートを作りました! 今後の方向性を決める上でも、お気に入りのシリーズへの投票や感想などぜひお願いします!
サンタ・アナの時代
1836年当時の「メキシコ共和国」大統領は軍部出身のミゲル・バラガン。1824年憲法の熱烈な支持者であったが、今回の政変ではサンタ・アナ将軍側につき、共和国の初代大統領として就任した。
1824年憲法を廃止したサンタ・アナ将軍の政変はメキシコ中に大きな動揺を与え、その1つの形が「テハス」の独立であった。1835年10月の「ゴンザレスの戦い」で幕を開けたこの「テキサス独立戦争」は、1836年1月1日のゲーム開始時点でまさにその渦中にあった。
史実ではメキシコ軍のサミュエル・ヒューストン将軍によってサンタ・アナ将軍が捕らえられ敗北するが、ゲーム上ではもちろんそんなことはない。
たちまちのうちに全土を制圧していき、1836年7月3日には降伏に追い込む。
無事、テハスはメキシコのもとに留まる結果となった。
1838年には、自由主義者たちとの接近を図ったバラガンを「罷免」し、新たにアナスタシオ・ブスタマンテを大統領に据える。
1830年から1832年にかけて一度大統領を務めたことのあるブスタマンテは、それこそサンタ・アナ将軍によって一度「挿げ替えられ」ている男だが、その保守的な姿勢は随一であり、サンタ・アナは再び彼を盟友として迎え入れることに決めた。
自由主義を抑圧し、改革を拒む彼ら保守主義者たちが権勢を揮う「サンタ・アナ時代」。
しかし、この時代に風穴を開けんとする者たちが現れた。
それが、時代を切り開く者たち――扇動者(アジテーター)である。
扇動者
この動きを主導したのが、サンタ・アナと並ぶ独立戦争の英雄でありながら自由主義を信奉し、サンタ・アナと常に対立し続けていた男、フアン・アルバレス。
史実では1854年にアユトラ革命によってサンタ・アナを追放し、自由主義改革を進めていくこととなるアルバレスだったが、1844年現在、まだ国内に彼の協力者は決して多くはなかった。
そこで彼が注目したのが祖国イタリアを追放され南米を旅していたジュゼッペ・ガリバルディ。
「制限選挙」制定に向けた政治運動を展開していたアルバレスは、同じく制限選挙制定を目指すガリバルディを招聘。
これに応じたガリバルディは「扇動者」としてメキシコの改革に協力してくれることとなった。
このアルバレスとガリバルディの努力の甲斐あって、1845年4月10日には制限選挙が制定。議会が復活し、メキシコに自由と民主主義を取り戻す基盤が整った。
さらにガリバルディとアルバレスは続けて「集会の権利」の制定に向けても動く。
これもまた民主主義の発展のために必要な措置。
当然、サンタ・アナ将軍率いる保守派勢力はこれを徹底的に弾圧しようとし、秘密警察を中心にして厳しい捜査を行っていく。
だが、アルバレスらもそれに負けず、言論の自由、民主主義の必要性を説くパンフレットを違法に配布していく。
そしてこちらも1851年7月13日に無事、制定。
サンタ・アナたちが意のままに操れる領域は着実に狭まっていき、その権力は少しずつ、削り取られつつあった。
それでも、地主・軍部・教会とが結託する「保守党」の力は現時点ではまだまだ根強い。
この勢力を何とか弱体化させねば・・・と思っていた中で、そのきっかけは思わぬ形でやってくる。
敗北と改革
1854年1月24日。
サミュエル・ヒューストンは馬車から降りると、白い大理石の階段を上り、大統領官邸――ホワイトハウスの扉を開けた。
彼は15年前のテキサス独立戦争で敗北したのち、テネシーで燻り続けていた。知遇を得ていたアンドリュー・ジャクソンの政権は間もなく崩壊し、しばらくはホイッグ党の政権が続いており、ヒューストンに再燃の機会はなかなか巡ってこなかった。
しかし先立っての1853年選挙で民主党が勝利し、ジョン・カルフーン政権が発足すると、カルフーン大統領はヒューストンを官邸に招聘した。
二人は同じ民主党員ながら、米英戦争時代から犬猿の仲であった。しかし今回、二人の利害は一致した。
すなわち、テキサスの「奪還」。ヒューストンは自らの人生を狂わせたあの敗戦へのリベンジを。そしてカルフーンは、出来上がったばかりの政権における明確な「実績」として、テキサスを含む「西部」の獲得を強く求めていた。
そして1854年3月31日。
アメリカ合衆国第14代大統領ジョン・カルフーンの名において、メキシコ共和国に対しテキサスおよびユタ、コロラドの「返還」が要求された。
サンタ・アナ将軍とバスタマンテの政権はこの状況を全く予期できていなかった。テキサスの独立を叩き潰したときも、民主党政権であったアメリカは一切こちらに口出しをすることなく、その後彼らの政権がホイッグ党に代わった後はアルバレスら自由主義勢力を支援するなど敵対的な関係が続いたものの、それでもメキシコに対する侵略の色を出してくることは一切なかった。
ましてや、昨年民主党に政権交代したことで、むしろ関係性は融和に向かうと判断していた。だが、いつの間にか彼らは12万もの常備軍を揃え、臨戦態勢に陥っていたのだ。
対するメキシコ軍の常備軍はわずか1万2千。予備役を含めても3万ちょっとであり、抵抗すらできない状況であった。
サンタ・アナ将軍はただちに諸外国に支援を求める使者を派遣するも、欧州のいずれの国もこれを黙殺。貿易協定を結ぶなど友好的な関係を築きつつあったロシア帝国もまた、同様であった。
当時、欧州諸国はエジプトとオスマン帝国間における2度目の戦争を目前に控えており、彼らの注目はすべてそこに注がれていたのである。
悔しさに唇を嚙みしめながらも、サンタ・アナ将軍は決断する。
すなわち、敗北を認め、アメリカ合衆国の求めるテキサス、ユタ、コロラドの3州の無条件割譲。無駄に抵抗すれば多くの死者が出ると共に、卑しくも追加要求してきたカリフォルニアなど更なる州すらも奪われる危険性すらあった。
かくして1854年7月1日。
メキシコ共和国の首都メキシコシティにあるグアダルーペ・イダルゴにて結ばれた条約で、件の3州がいずれもアメリカ合衆国の支配下に置かれることが認められた。
この事態は、それまでの強権的な軍部の独裁体制を大いに揺るがすこととなってしまった。その権威は失墜し、求心力も発言力も大幅に低下。
当然、自由主義勢力にとってこれは大きなチャンスとなりうる。
アルバレス将軍はただちにこれまでのサンタ・アナ将軍による暴政を大いに批判し、自由主義陣営による理想的な政治運営を強調する「アユトラ綱領」を発表。自身の支持基盤となるゲレーロ州にて大規模な集会を行い、集まった民衆と共に、サンタ・アナ将軍の追放と政府の改革の必要性を訴えたのだ。
その場にはアルバレスだけでなく、かつてサンタ・アナに対抗したために逮捕・投獄されアメリカ合衆国へと亡命していたはずのベニート・フアレスの姿もあった。
もはや弱体化し形骸化した軍部に代わり政治の主導権を握った彼ら自由主義改革派は、一連のレフォルマ(改革)法と呼ばれる急進的改革を進めていくこととなる。
その中の一つが、起草者であるフアレスの名を取って「フアレス法」とも呼ばれた「完全分離」法であり、これは聖職者の特権、特に教会の権威を、民法に従属させることで制限するものであり、保守派の勢力を大幅に削り取ることを企図したものであった。
当然、この改革に対する保守派の反発は甚大なものであった。
ローマ教皇ピウス9世はフアレスの破門を宣言。
そして地主・軍部・教会による保守派勢力がサンタ・アナ将軍を中心として蜂起の構えを見せ始めたのである。
もはや、内戦は不可避。
そう睨んだアルバレス将軍は直ちに首都に新たな武器庫と兵舎の建造を命じ、そのときに備える。すでにベラクルスやサカテカスの軍港や武器庫、兵舎も反乱軍に抑えられており、戦力を集中させて対抗する必要があった。
そして1855年7月23日。
ついに、保守派勢力による蜂起が現実のものとなり、メキシコは独立以来高まり続けてきた保守主義者と自由主義者による対立は頂点に達し、内戦へと突入した!
レフォルマ戦争
この戦争に対しフランスが興味を示しており、介入を申し出てきてもいる。
しかし逆に敵側にはフランスと対立するオーストリアが接近しており、下手にフランスを呼ぶと彼らも参戦しかねない。変に内政干渉されて外国人皇帝を立てられても困るため、ここは丁寧に拒否しておく。
代わりにガリバルディが自らこの戦争を成功させるべく立ち上がると約束してくれた。
早速アルバレス将軍は彼に1万の兵を持たせ、前線に立たせる。
そして1855年10月30日。
ついに、保守派と自由主義派による内戦「レフォルマ戦争」が開幕する。
まずは重要な軍港であるベラクルスを押さえるべく、ガリバルディの軍がこれを強襲。サンタ・アナ将軍も自ら兵を率いて対抗するも、数の差は圧倒的であった。
1月には反乱軍の拠点であるオアハカを始め多くの領土を制圧。
分断された戦線で、メキシコ人の指揮官も徴兵された兵を含めた大軍で次々と反乱軍の守りを打ち破っていく。
状況は圧倒的に自由主義派の優勢であった。
やがて1856年6月19日、サンタ・アナ将軍とブスタマンテの亡命によって勢力の維持が困難となった反乱勢力はついに降伏を選ぶこととなった。
ついに、「サンタ・アナの時代」は終わりを迎えた。
この改革をアルバレス将軍と共に主導し続けてきてくれた扇動者ガリバルディは、戦いの終わりを見届けた上でメキシコの地を去ることとなった。
のちに彼はイタリア統一においても重要な役割を果たし、「二つの世界の英雄」と称されることとなる。
あとは、メキシコ人が自らの手で、運命を切り開いていかなければならない。
その先にあるのは永遠の繁栄か、それとも――。
第2回へと続く。
これまでのプレイレポートはこちらから
虹の旗の下で 喜望峰百年物語:ケープ植民地編。完全「物語」形式
パクス・ネーエルランディカ:オランダで「大蘭帝国」成立を目指す
強AI設定で遊ぶプロイセンプレイ:AI経済強化MOD「Abeeld's Revision of AI」導入&「プレイヤーへのAIの態度」を「無情」、「AIの好戦性」を「高い」に設定
金の国 教皇領非戦経済:「人頭課税」「戦争による拡張なし」縛り
Crusader Kings Ⅲ、Europe Universalis Ⅳのプレイレポートも書いております!
アンケートを作りました! 今後の方向性を決める上でも、お気に入りのシリーズへの投票や感想などぜひお願いします!