ナポレオン戦争で一度国として滅びたあと、欧州の緩衝国家として復活させられた「小国」ネーデルラント連合王国。
しかし彼らはかつての栄光を取り戻し、世界最大の帝国となることを夢見て、その権益の拡大に努めた。
19世紀末の2度の大英蘭戦争を経てオーストラリアとカナダも獲得し、いよいよ「七つの海」を支配し始める。
英国に代わり列強1位となったフランスもロシアと手を組んで挑みかかるも、蘭墺同盟はこれも撃退に成功。
かくして、ネーデルラントはついに世界一の座を手に入れる。
しかし、国内では急進的自由主義者たちの政権が主導する失業者問題や女性の権利問題を巡って内部対立が激化。
かつて隆盛を誇った知識人や労働者を中心とする自由と平等の勢力は衰退し、不満を蓄積するネーデルラント人や兵士たちの支持を集めた軍部が勢力を拡大。
「大蘭帝国」の未来は、果たしてどんな光景が広がっているのだろうか。
パクス・ネーエルランディカ最終回。
世界を支配する覇権国家の結末をお送りしよう。
目次
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金の国 教皇領非戦経済:「人頭課税」「戦争による拡張なし」縛り
エグモントの権力獲得と大インド戦争
1914年12月28日。
共産党を設立し、労働者も女性もみな平等に暮らせる理想国家を作り上げようと奮闘していたヘンドリック・ブスケスが急死。
共に女性の権利拡大に尽力し、これを実現していった盟友の死を受け入れられず、知識人指導者サラ・コーエンも深い心の傷を負い、塞ぎ込んでしまった。
この一連の出来事を経て機能不全に陥った政権与党・自由思想家民主同盟は、無力化したコーエン派を党から追放し、代わりに国民の支持を集める愛国党を招き入れる決定を下す。
愛国党党首ルーベン・ファン・エグモントもこれを受け入れ合流が実現。
その見返りとしてエグモントが首相に就任したことで、彼ら軍部の強硬姿勢がダイレクトに政策に反映されることとなった。
もはや、国王の意向はそこに反映されることはない。
軍部主導の連合王国政府は、「真の大蘭帝国の復活」をスローガンとして掲げ、軍拡を推し進めていくこととなる。
1916年4月4日。
若きオランダ人技師アントニー・フォッカーが世界に先駆けて有人動力飛行を実現。
軍部はこの技術を直ちに軍事利用するべく各地に工場を設立し、「飛行機」の量産を開始。
さらに同時期に実用化が急速に進んだ「無線」を全部隊に配備し、塹壕突破力に優れた「浸透戦術」のレクチャーを受けた分隊単位の精鋭突撃部隊を主力軍に組み込んでいった。
全ての準備は整った。そう判断したエグモント首相は1918年4月1日に英国に対しその植民地であるインド帝国の割譲を要求。
当然英国はこれに反発し開戦を決意したほか、これまで不動の同盟国であったオーストリア=ハンガリー帝国もこれに反発。英国側につき、ネーデルラントと対立する道を選んだ。
が、それもエグモントの見立て通りであった。もはや、帝国を阻むものなど存在しない。ただ、理想の実現に向けて突き進むだけだーーと。
そして1918年7月30日。
エグモントによって「大インド戦争」と名付けられたこの史上最大の征服戦争が幕を開ける。
まずインド戦線では航空機部隊を組み込んだカシミール・フォン・ザクセン・ヴァイマル元帥の部隊が順調に進軍していく。
参謀総長コンスタンティン・ファン・ザクセン・ワイマール元帥の弟であるこの男は、自ら戦闘機に乗り込み、空から敵軍に対して攻撃をしてみせる全く新しい戦法を先頭に立って実践してみせ、「飛翔する軍神」と呼ばれた。
そんなカシミール元帥に率いられた部隊は圧倒的な突破力を誇り、順調に北インドの地を侵攻。
インド帝国の首都ムルターンに向けて、着実に軍を進めていく。
一方のアフリカ戦線では現地司令部のエルンスト・シャウテン元帥やシモン・ファン・ヘームシュケルク元帥によって英領南カメルーンへの侵攻を開始する。
ここも400万以上の人口を抱え、是非とも帝国への編入を目指したい土地となる。
一方、敵側も戦略目標であるベンガル、シャムに対して猛烈な侵攻を加える。
全体的に数的不利のため、各々の戦略目標への攻撃、戦略目標に対する攻撃への防衛にのみ戦力を集中させ、それ以外の土地は見捨てる覚悟で戦う必要があるだろう。
全軍動員していることもあり、毎週156万ポンドの赤字を垂れ流す。まさに総力戦である。
そして開戦から1年後の1919年7月22日。
ついに敵首都ムルターンも制圧。
度重なる輸送船団破壊によって使い物にならなくなったオーストリア=ハンガリーもすでに降伏しており、イギリス自体の降伏も目前に迫っていた。
そして1919年10月29日、イギリス降伏。
ついに、大英帝国の象徴たる巨大植民地「インド帝国」を、ネーデルラントは自らの手中に収めたのである。
この功績をもって、首相ルーベン・ファン・エグモントはいよいよその「計画」の最終段階に着手することとなる。
帝国は共和国のもとに
その日、首都ハーグにあるノールトアインデ宮殿では、やや憔悴した表情の国王マウリッツ1世がエグモント首相を迎え入れていた。
父の死に伴い王位を継承して30年。当初こそ自身に影響を与えた急進的自由主義者たちと共にこの国を良くする改革を積極的に行ってきたという手ごたえがあった。
しかし20世紀に入ってからというもの、帝国としての威信を高めるほどに湧き上がる国内の暴力的な欲望に、次第に彼は虚しさを覚え始めていたのだ。
事実、すでに政治の実権は彼の手中にはない。何をしようとしても議会に「説得」され、できることと言ったら彼らが用意した「結論」に了承のサインを与えることだけであった。
この日も、熱心に自分に何かを説いてくるエグモント首相の言葉を、ほとんど理解することもなく横から横に流しているだけの状態であった。
「・・・ゆえに、改革は今すぐに為されなくとはならないのです。無政府主義者エルヴィン・ファン・デンボッシュの下で共産党は再び力をつけ始めてきております。陛下の叔父上にあたりますコルネリウス大公殿下も『前衛主義』なるより急進的な思想に染まっている様子であり、これを放置しておきますと近く凄惨なる内戦が引き起こされかねません。一方でドミニカス大公殿下も近年『ネーデルラント民族主義』を掲げアムステルダムで支持を集めつつあり、強力な政体のもとでこれらの動きを掣肘し、バランスを取っていくことが重要なのです・・・」
エグモント首相の言葉が終わったのを聞き届けて、マウリッツ1世は最後に彼の顔を見て威厳たっぷりに回答した。
「わかった。そうせい」
かくして1920年10月16日。
首相ルーベン・ファン・エグモントと政府与党・自由思想家民主同盟の主導のもと「王政の廃止」と「大統領共和政の開始」を宣言する「共和国宣言」が発布。世界を支配する大蘭帝国はこの日、最も民主的な帝国へと生まれ変わったのである。
初代大統領に就任したのは当然、ルーベン・ファン・エグモント。
彼は大統領就任演説でアムステルダムの広場に集まった民衆に向けて語りかけた。
「今日、ついに我らがネーデルラントとその同盟諸邦は本当の意味でのかつての栄光をすべて取り戻すことに成功したのだ。350年前、当時の偉大なるウィレム公による独立と自由の獲得、そして共和国政府の聡明なる施政者たちにより、世界中にその威容が広められ七つの海を支配した。その血脈は一度英国の王すら経験し、現在もその種子は継承されている。
しかし100年前にヨーロッパを襲った暴力の嵐はかつて存在したその偉大なる共和国を崩壊せしめた。その後、瓦礫の中から再びオラニエ公が国を取り戻し、今日に至るまで、その名誉を回復させることに尽力頂いた。
我々はその意志を正しく、引き継がなければならない。先だっての英国との最終戦争での勝利により、その基盤はついに作られた。
本日、我々は再びこの国の名を口にすることができる。
ネーデルラント連邦共和国(レ・プブリーク・デア・エーネンデルタフ・フェレイネフデ・ネーデルランデン)。
永遠に続くこの誇り高き名を、共和国の伝統を、私は重責を持って守り通すことをここに約束する」
それから7年。
拡大する連邦共和国に対しフランス王国やロシア帝国が懲罰のための戦争を仕掛けてきたりもしたがこれはすべて撃退し、逆にその領土を奪うなどして、さらなる拡大を成し遂げつつあった。
共和国連邦はあらゆる差別を否定し、男女間での不平等も失くし、労働者の権利も広く保証する先進的な共和国として世界52州と4億の人口を直接支配する巨大連邦国家を形成していた。
エグモント自身は3年前に引退し、その後を選挙で勝利した共産党のエルヴィン・ファン・デン・ボッシュが継承。
急進的過ぎる自由主義を推し進めようとする傾向のあるこの男ではあったが、元老となったエグモントは引き続きその背後で睨みを利かせ、「間違い」が無いよう常に見張り続けていたという。
この帝国は「きっと」これからも、世界の頂点に立ち、繁栄を続けていくことだろう。
パクス・ネーエルランディカ。
「ヴィクトリアの時代」を、「低地諸国」は席巻してみせたのである。
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と、いうことで今回はここで終了。
本当は「覇権国」ジャーナルを最後に達成し終わらせたかったのだが、「世界の半分の人口」という条件を結構舐めていた。世界中の人口密集地を全力でかき集めていたつもりだったが、1927年、残り10年を切った状態でまだ属国合わせて6億4千万。あと最低でも4億は人口を増やさないと世界の半分には達成しない。今のオランダの人口が4億くらいなので、かなり絶望的だ。
最初からWCを狙うくらいのつもりで計画的にやらないと達成は難しそうだな・・・
ゲームもかなり重くなってきて進行に支障が出てきたため、非常に中途半端だがここで終了。
オランダを英国に代わる世界帝国にのし上げるという目的は十分に達成させられたのでよしとしよう。
Ver.1.2リリース後、日本やビルマ、ナジュドなど様々な国を試してきたが、やっていて感じるのは小国でのプレイの難易度がかなり上がってきているということ。列強を目指すとか考えるとかなりストレスフルになっており、逆にこのオランダのような中小国の方がプレイ快適性は高い。
このことは批判の対象ともなっているようなので、今後何かしらの改善が見られる可能性はある。以前のように小国でも簡単に世界征服できるバランスよりは良いとは思うし、列強になることだけがゲームの目的ではないと思うのでいいんだけどね。
5月末に待望のDLCが発売されることもあり、非常に面白そうな改良がなされているようなので楽しみである。
それまでにもいくつか国は試してみるつもりだが、もしまたレポートを上げるときがあればそのときまたご覧いただけると幸いだ。
それでは、さようなら。
参考:1927年時点での各種データ
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