永禄11年(1568年)、戦国時代末期。
尾張一国から瞬く間に勢力を拡大させた織田信長なる男が、前将軍弟の足利義昭を奉じて上洛、前将軍を弑殺した三好三人衆を屈服させ、畿内の支配を確立させつつあったその頃、その畿内にて悪名を馳せる「山の民」なる非合法集団が存在した。
南蛮風の容貌を持つ青年を頭領に据えたその一団は、元亀元年(1570年)末の京都周辺で巻き起こった三人衆の内紛「三好騒動」にも関わったとされ、織田政権下における危険人物たちとして注目されることとなる。
そんな中、翌元亀二年(1571年)。その「山の民」が、信長が膝元たる岐阜に姿を現したとの風説が駆け巡った。
茫漠なる歴史の中の塵の如き存在であったはずのそれは、やがて大いなる染みとなって世界に影響を与え始める。
異端戦国大河第二章、これより開帳。
目次
※ゲーム上の兵数を10倍にした数を物語上の兵数として表記しております(より史実に近づけるため)。
Ver.1.13.1.2(Basileus)
Shogunate Ver.0.8.6.3(紅葉賀)
使用DLC
- The Northern Lords
- The Royal Court
- The Fate of Iberia
- Firends and Foes
- Tours and Tournaments
- Wards and Wardens
- Legacy of Perisia
- Legends of the Dead
- Roads to Power
使用MOD
- Japanese Language Mod
- Shogunate(Japanese version)
- Japanese Font Old-Style
- Historical Figure for Shogunate Japanese
- Nameplates
- Big Battle View
- Battleground Commanders
- Personage
- Extended Outliner
前回はこちら
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美濃尾張にて
元亀2年(1571年)1月6日、尾張国某所。
人気のない小屋の中で、男が二人、向かい合っていた。
「時間がかかってもいい。盛雄の奴を、死霊のもとに送り届けてくれ。そうすれば、私は奴のことを考える必要がなくなるのだ」と、林弥六郎秀貞はうめく。
私は頷いた。まだ語られていないことは沢山あるーー彼がなぜこの男を死なせたいのか、なぜそのような非合法な道を取らせてしまうのか、などーーしかし、そんなことはどれも、私の知ったことではない。
一つの命が短く終わり、報酬が支払われる。
私のスパイが盛雄の暗殺に成功した! アッラーに感謝を、もはや私の悩みの種はなくなった。
波は我々の計画を完璧に実行した。真夜中、巡回する警備兵の隙を突き、盗んだ鍵で獲物の部屋へと忍び込んだ彼女は、盛雄を自らの喉から溢れ出した鮮血で溺れるという惨めな最期へと導いた。
ありがたいことに、噂話は絶えないものの、私の犯罪への関与は不明のままだ。
「お届け物だ」と言って、私は湿った袋を男の前に投げ捨てた。濡れた布地が横に傾き、生い茂った髪の房が露わになった。
「『彼の首を持ってこい』とは言ったが、そのままの意味で実現するとはな」男はうめきながら言った。「逃げ出すのは大変だっただろう。よくやった。報酬は外の召使いが払う」
私は恭しく頭を下げ、その場を立ち去った。
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「ーーかくして、山の民なる悪党たちは、ここ美濃尾張周辺にて堂々と活動を繰り返し、我らが織田家重臣らもまた、密かに彼らを重用するような素振りを見せることさえ御座います」
側近からの報告を、岐阜城主・織田信長は神妙な面持ちで聞いていた。
「つい先日は、殿の弟君であらせられます信興殿もまた、それと知ってか知らずか彼らを雇い入れた模様にて・・・秀成殿の水野殿への護送という、これは幾分か真っ当な仕事ではあるようですが」
「ーー奴ハ危険デス、ノブナガ殿」
信長の傍らに立っていた一人の南蛮人が、真剣な顔つきで注進する。
「奴も貴様も、同じ南蛮人ではないか」
「トンデモゴザイマセン」
男は心の底からの嫌悪感を顔に貼り付けて大袈裟に首を振る。
「奴ハ悪魔ヲ信ズル異端者・・・我ラガ終生ノ宿敵デゴザイマス」
「ふん・・・先達て、我が滝川と松永の謀反を早々に鎮圧した出来事を覚えているだろう?」
唐突な信長の問いにフロイスはやや面食らった表情を見せつつも頷いた。
「アレハ真ニ迅速ナル対応。アラカジメソノ動キヲ知ッテイタガ如クデシタ」
「ああーー実際、我は知っていた。いや、知らされたというべきか」
そう言って信長は一通の書簡をフロイスに手渡す。フロイスの傍らに立っていた日本人がそれを流暢なポルトガル語で翻訳する。
「滝川一益の周辺を調査し、調べ上げられたことが丹念に記載されている。公になっていないいくつかの事実も並べられ、信憑性は確保された代物だが、その中に滝川の周辺の怪しい動きについて書かれた部分も多くあった」
「コレハ・・・一体ナニモノカラ?」
「『山の民』が依頼を交わす際に用いる署名が記されている以上、奴らの手によるものとみて間違いないだろう。これが突然、岐阜の我が城内に届けられていた。彼らなりの宣伝なのだろうが、中身をよく確認し、虚偽がないことを確認した上で準備し、そして謀反を鎮圧したというわけだ」
信長の言葉に、フロイスは唸る。
「シカシ、奴ラハ必ズ、ノブナガ殿ニ危害ヲ加エ得ル邪悪ナル者トナルデショウ・・・」
「有用である限り、我は差別はせん。貴様らに対してと同様に、な」
「オオ、デウス・・・」
天を見上げるフロイス。それを愉快気な顔で見ていた信長だったが、しかしふと、真剣な表情を作り、告げた。
「とは言え、度が過ぎれば我も考えねばならぬ。奴らが我が統治構想に反する意図をもってこの地に根を張ろうとするならば、然るべき対処をする必要もあるだろう」
三河にて
碧海に到達すると、私はすぐにろくでなしの扇動者たちを集め、彼らに釈明を求めた。ある程度名の知れた農民である石川数正が他の者たちを代表して話した。
「私たちに課せられた税金はひどく重いものですが、私たちはそれを懸命に支払っています。私たちはそれ故に常に余裕がない状態を強いられています! 私たちが税金を支払えば支払うほど、徳川家康は更なる支払いを我々に要求し、そしてその徴税人たちはさらに裕福になっていくのです・・・彼らこそ、あなたが立ち向かうべき相手ではないのですか!?」
「ーーいやはや、ハサン殿と言ったか? 噂はかねがね聞いていたが、これほど迅速に、見事な結果をもたらしてくれるとは」
岡崎にある自らの居城にハサンを招いた三河の大名・徳川家康は、上機嫌にこれを歓待する。
「聞かば既にこの中部一帯の有力者たちとも繋がりを持たれているとのこと。末恐ろしいですなーーいざとなれば、国一つ乗っ取ることさえ、可能ではないか?」
笑みを貼り付けたまま、家康の目が鋭くハサンを貫く。
「ーーそのような畏れ多いこと。少なくともかの尾張殿のお膝元では考えることさえ危険だと理解しています」
「はは、違いない」家康は笑う。「さて、それはそれとして、此度の成功の報酬、如何するか。金銭は依頼主の清左衛門が支払ったかとは思うが、儂からも何か見返りがあっても良いだろう」
「そうですね・・・」ハサンは暫し思案した様子を見せつつ、告げた。
「ーー寧ろ、私としては三河殿、貴方から直接何か依頼を頂ければと思っております。それも、私たちの実力を認めて頂いた上で、他の何者にも依頼できぬようなものを・・・」
ほう、と家康は唸る。少し、考えた様子を見せたのち、
「ーー分かった。ならば、一つ、ここだけの依頼を出そうか」
そう言って、少しばかり前屈みに、声を顰めて話し始める。
「ある人物を調査してもらいたい。ある人物とは、我が妹婿にあたる服部半蔵正成なる人物だ。彼は何かを隠しており、それを明らかにしてほしいのだ。
いや、そんな回りくどい言い方は必要ないだろう。要はーー」
「彼を失脚させるに足る何かを作り出して欲しい、というわけですね」
ハサンは微笑み、家康は小さくゆっくりと頷く。
「良いでしょう。並みの素破ならいざ知らず。我々ならば、容易い任務と言えます。果たして貴殿が義弟でもある彼を何故追放したがっているかは計りかねますが、それもまた戦国大名という立場故の苦しみと言うことなのでしょう。深入りすることは私の及ぶところではありません。
お任せ下さい。数日中には必ずや、満足いく結果をもたらしてみせましょう」
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「ーーほう」
ハサンは、意外な驚きと共に、深い笑みを口元に浮かべた。
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「ーーと、言うわけです。信仰心の薄さと言うのはこの国ではさしたる罪にはならないでしょうが、そこから起因して彼は寺社への寄進を怠り、領国の統治を疎かにしております。多くの関係者が彼に不満を持っており、これらを追放の理由とすることはできるでしょう」
「フム・・・まあ、良いだろう。元より中々警戒心が強く、隙を見せなかった男だけに、それだけでも調べ上げることができたのであれば上出来だ。予定通り、奴を追放することとしよう。これが報酬だ」
やや満足しきってはいない様子ではあるものの、家康は約束通りの報酬をハサンに手渡す。「で、これからどうするつもりだ?」
「そうですね・・・そろそろ、この地にも長居し過ぎましたので、再び畿内へと戻ろうとは思います。丁度、侍従殿の家臣でもあられます酒井殿から、彼の奥方の京への護送任務も承っておりましたので」
「そうか。次に会うときは、また違った関係になるやも知れぬな。貴殿にはどこか、計り知れぬところがあるように思う故に」
「そうですね・・・御達者で、侍従殿」
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「ーー良かったのか?」
半蔵は三河を後にするハサンに小さく耳打ちする。「三河を巡る中で得た情報・・・先達て今川領を完全に征服しきった武田が、徳川国境の国衆に対し調略を仕掛け、かつ兵糧や軍馬の支度を整えつつあるという情報を」
「それは依頼には含まれていなかったからな」と、ハサンは肩をすくめる。
「それに、その情報をもたらしたところで、何かが変わるわけではないだろう。それよりも、その後に生まれる新たな秩序とどう付き合うかが大事だ。
そして、それは我々もまた同様だ。
此度の畿内への帰還、それが意味するところは、これまでと違うものを求めるということだ」
「ーーやるのか、ついに」
半蔵の言葉に、ハサンは頷いた。
「ああ・・・それが私の、目的のための第一歩だからな。
流浪の身を終え、領地を手に入れる。標的はーー堺だ」
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堺にて
長く流浪の生活を続けてきた悪党集団「山の民」。
彼らはその頭領たるハサンの希望に沿う形で、ついに「所領獲得」への動きを開始する。
そしてその標的として選ばれたのが、畿内最大の貿易港・自治都市たる「堺」である。
必要なものは盗むか奪うかして集団の維持を気にすることのなかったこれまでと違い、土地を持ち、正式な領地と領民、家臣たちを揃える必要のあるこれからは何かと経済的な出費が嵩むことが予想される。
その中で高い開発度を誇り、南蛮や大陸との交易も盛んな大貿易港を持ち、所有しているだけで莫大な経済的利益をもたらしてくれる上、特にどの巨大勢力とも連合していない自治都市である堺は、力づくで奪うのに最も適した土地と言える。
もちろん、すぐにこれを攻め込み奪い取れるわけではない。まずはこれまで通り依頼をこなしつつ資金を貯めると同時に、「見返り」として「常備軍」を次々と貰い受けることを重ねる。
天正2年(1574年)頃には(常備軍だけで)合計2万もの兵を揃えることに成功した。
そして天正3年(1575年)3月。ハサンは近江国で兵を挙げ、深夜に密かに堺を強襲。
その襲撃は静かに、そして一瞬のうちに行われた。数多くの市民、そして国外勢力たちがそれと気付かぬうちに、山の民は堺の武力を完全に無力化し、その会合衆を言いなりにさせることに成功したのである。
ハサンは急いではいなかった。じっくりと時間をかけ、少しずつこの堺の支配権を確立させていく。それまでの間は引き続き、部下たちに闇の仕事をこなさせ、集めた資金はまた、堺での支配権確立に使用していった。
そして天正5年(1577年)2月。
ついに堺は完全にハサンとその部下たちによる統治が確立し、表向きはこれまで同様商人たちによる自治都市でありながら、その実態は旧・山の民による支配が及ぶ彼らの「拠点」となったのである。
そしてハサンはこの都市の「首長」として公式な場においても君臨することとなる。彼は新たに日本風の名前を名乗り、純粋に経済力で成り上がり、有力商人たちによる選挙で選ばれた存在であるかのように振る舞った。
もちろん、彼の正体を知る畿内や中部の有力者たちは、その実態がハサンによる堺の征服であり、これまでどの勢力の手にも落ちることのなかったこの中立勢力が、突如として一つの得体の知れない武力集団によって暴力的に乗っ取られたのだということを理解していた。
しかし彼らにはどうしようもできなかった。何しろそれは気がつけば一夜にして実現していたことであり、同時にこのとき、それに対処できるほどの余裕が、彼らにはなかったこともまた、事実なのである。
ハサンが堺征服に動き始めた天正3年から5年にかけての時期に、戦国時代は大きな局面を迎えつつあった。
混乱と拡大
まずは天正4年8月。甲斐信濃の大名・武田信玄が徳川領へと侵攻を開始。
もちろん徳川は同盟国の織田に救援を求めが、彼らは動くことはなかった。彼らは実はこのとき、同盟を結んでいた上杉謙信と共に、北条家に対する侵攻を行うために兵を出していたのである。
そしてハサンが堺の支配権を確立する直前頃に、ついにこの北条、徳川の両雄が滅亡。関東から中部にかけては、織田、上杉、武田がその支配権を確立する事態となっていた。
さらに、織田信長はその裏で、自身の主君たる足利義昭との対立を深めており、特に天正6年(1578年)に発布された「異見十七条」によってこれは決定的なものとなる。
義昭は密かに挙兵を企てるも事前にこれが露見し、それを大義名分として兵を挙げた信長によって義昭は追放。250年近く続いた室町幕府は滅亡と相成ったのである。
畿内における止むことのない混乱を横目に、ハサンはさらなる勢力の拡大を企図。
まずは隣接する南河内の支配者・三好長治に宣戦布告。その領地たる獄山城・高屋城を征服し、これを奪い取ることに成功する。
さらに続いて北河内の地についても、同様にこれを支配する三好家当主・三好義継に対して宣戦布告。
これもわずか4ヶ月後の天正7年(1579年)11月には勝利し、南北河内を統一。
義継から河内国の称号を奪い取り、河内の大首長としてその名声を確かなものとしたのである。
そしてハサンは、この北河内(八尾城、飯盛城)の代官として、一人の男を招聘することとなる。
かつて徳川家康の妹を妻に迎え、その重臣としての地位を確立しながらもふとしたきっかけで疎まれ、追放の後、流浪の身となっていた服部半蔵正成である。
信仰の使徒
天正8年(1580年)1月。
ハサンは堺にて大々的な正月の儀を開き、領国内の諸侯らを招き、盛大にこれを祝賀した。
そこにはもちろん、服部正成の姿もあった。それどころか彼は宴の主役として呼ばれており、ハサンは自らこれを盛り立てる程であった。
「ーー巴算殿」
居心地の悪さを感じながら歩き回っていた服部正成は、彼の新たな主君を見つけると足早に近づいてきた。
「かほどの豪勢たる催しにお招き頂けること、実に光栄の極みで御座いますが・・・」
「何を不思議がる必要がある。貴殿は我が領国における我が本拠たる南河内と並び、重要たる北河内の首長を任ぜられた身。言わば我と並び得る存在ゆえ、堂々としておるがよい」
「ーーまさに、そのことに関してであるが」
正成はほとほと困り果てた様子で囁く。
「何ゆえ私めがそのような立場をいきなり受け取ることができるのか、理解に苦しむばかりで御座います。聞くだに、貴殿は裏の世界では実に有名なる御仁。古くより付き従う有能なる従者たちも多くおりますでしょうに、それを差し置いて私めのような部外者がなぜ堂々と領主を任されようか」
「フム」
正成の言葉を、ハサンは真っ直ぐに受け止め、その深く暗い双眸で正成を見据える。
「ーー私は、貴殿の心の奥底に眠る深い信仰心を、何よりも信頼できる証と捉えている」
唐突なそのハサンの言葉に、正成は応える言葉を思いつかずに黙りこくる。
「貴殿はその心の奥底に、この国の神も、あるいは如来や仏をも、信じることの出来ぬ深い疑念があることを私は知っている」
正成は少し目を見開きながらも、口を開くことなくハサンの次の言葉を待っている。
ハサンは瞳の鋭さをさらに増し、声を抑えて告げた。
「貴殿はこの国の神ではない神を、信じているな?」
正成の額を浮き出た汗が伝落ちる。それがゆえに彼はかつて領国を追放された。その裏にハサンがいたことは気づいていない。
「ーーそして貴殿は、その神の正体に気づいていない。ただ、この地のものではない、何か大いなるものがこの世界にはいて、我々貧しき人間たちを導こうとしていることを理解している。しかしその神の名を、貴殿はただ知らぬだけなのだ」
ハサンの言葉を、正成は黙って聞き入っている。その表情は恐れと驚きとが入り混じって複雑な色を呈している。
ハサンはフ、と柔らかな笑みを浮かべる。
「ーー案ずるな。我はその神の名を知っている。正確には、その神の言葉を正しく受け取る偉大なる預言者のことを、だがな。
この世界には、その正しさを理解し得ぬものが数多く蔓延っている。故にこの世は乱れ、貧しく、そして多くの者が地獄へ向かわんとしている。
私は神によって導かれ、この世界へと降り立った。この遥か異世界においても、正しき神の名と、預言者の言葉を届けるために」
「そして貴殿はその第一の使徒となるだろう。貴殿の心には、正しき信仰の核が宿っている。誤った信仰に毒されていない、赤子のように純粋なる核が。長きに渡り宿主を探し求めていたその核に、今、真なる信仰を注ぎ込もうではないか」
「ーーそう、か」
ハサンの双眸に魅入られ続けていた正成は、長い夢から醒めたかのような放心状態で、呟いた。
「ーー私は、ようやく真実に辿り着いた、というわけですね」
「その通りだーーようこそ、正しき世界へ。共に、この世に真の平穏と安寧をもたらすべく、戦おうではないか」
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ハサンは宴の最後にこの新たなる盟友・服部半蔵正成のことを一同に紹介した。そして彼らが共有する、この国にはこれまで存在しなかった信仰のことを。
ハサンはさらに、その繋がりをより深いものとすべく、正成の娘である正子を自らの妻として迎え入れる。
信仰と、氏族的関係ーー周辺とは全く異なる新秩序でもって畿内における勢力圏を、ハサンは着実に築き始めていたのである。
だが、この状況を、快く思わない者もまた、いた。
畿内の殆どの勢力が同様に警戒心を抱きつつも、三好家が次々と武力で屈する様子を見て怖気付いていたのに対し、この男だけは、毅然とした様子でハサンという異質な秩序の拡大に立ち向かおうとしていたのである。
「ーー度が過ぎるな、異邦の者よ」
男は手にした盃を一息に飲み干すと、それを力強く机に叩きつけた。
「然らば、身の程を分からせねばならぬだろうーーこの手でな」
第三話へ続く。
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過去のCrusader Kings Ⅲプレイレポート/AARはこちらから
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